対人賠償保険は、自動車保険の補償の中で重要な役割を果たしています。ほとんどの保険会社で、対人賠償保険を基本補償としていますが、概要を詳しく把握している方は少ないようです。
そこで今回は、対人賠償保険の概要について取り上げながら、主な補償内容、補償対象外となるケース、自賠責保険との違いなど、詳しく解説します。
自動車保険における対人賠償保険とは、自動車の交通事故により他人を死傷させてしまった際、損害賠償を補償して貰うことができる保険です。
自動車保険の中では非常に重要な補償内容となっており、対人賠償を外して自動車保険に加入することはほぼできません。任意で選択することができたとしても、万が一に備えて必ず加入しておくようにしましょう。
なお、対人賠償保険は、自賠責保険の上限金額を越えた部分のみ、保険金が支払われる仕組みとなっています。そのため、自賠責保険の補償範囲内の事故であれば、対人賠償保険が支払われることはありません。
また、保険会社によっては、対人賠償保険に自転車運転者損害賠償責任補償特約が自動付帯されていることがあります。
この特約は、記名被保険者(主に運転する方)が自転車に乗っている最中に事故を起こし、損害賠償責任を負った際に補償されるものです。
他にも示談代行サービスなど、様々なサービスや特約が自動付帯されていることがあるため、必ずチェックしておきましょう。
対人賠償保険で支払われる補償は、大きく分けると3種類あります。
ここではそれぞれの補償内容について、見ていきたいと思います。
そもそも自賠責保険の保険金は、被害者1名ごとに対して支払われます。自賠責保険の補償額を超えた部分に関しては、過失割合に応じて対人賠償保険金が支払われます。なお、権利保全行使費用、損害防止費用、緊急措置費用も併せて支払われます。
死亡・後遺障害、ケガによる治療で対人賠償保険金が支払われる際の内訳は、以下の通りです。
死亡・後遺障害 | 過失利益、葬祭費、精神的損害(慰謝料) 後遺障害が認定された場合は将来の介護費など |
---|---|
ケガによる治療 | 治療費、入院費、休業補償、精神的損害(慰謝料など) |
見舞品代、香典代などの費用が臨時費用として支払われます。保険会社によって金額が異なるため、必ず確認しておくようにしましょう。事例として、イーデザイン損保、アクサダイレクトの保険金を以下に記載しました。参考にしてください。
イーデザイン損保:相手が死亡した場合、被害者1名につき15万円。
※保険開始日が2015年9月30日以前の場合、相手が死亡した際は被害者1名につき15万円、3日以上入院は3万円となっています。
アクサダイレクト:相手が死亡した場合、被害者1名に対して10万円。入院20日以上は2万円。
訴訟費用、弁護士報酬、示談交渉費用、保険会社の協力費用、調停費用、仲裁・和解費用などが補償されます。
ようするに、対人賠償保険は慰謝料や治療費だけに限らず、事故対応や事故処理などで必要となる費用も、すべて補償してもらうことができるのです。
※保険会社によって補償範囲・補償内容は若干異なります。
対人賠償保険の対象者は、他人となっています。そのため、以下の5つのいずれかに該当する場合は、保険金が支払われることはありません。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
ようするに、保険金詐欺のことを指しています。保険会社では、事故発生時に必ず実態調査を行っているため、故意で事故を起こしたことが判明した場合は、補償を受けることができません。
台風、洪水、高潮、自身、噴火、津波で生じた損害は、補償対象外となります。
※津波に関しては、地震や噴火によって発生した津波のことを指す
異常事態は予測できないものですが、上記のような事態によって受けた損害は補償対象外となります。
被保険自動車を競技、曲技、試験のために使用したことで生じた損害。もしくは、これらのことを目的とする場所で使用した際に生じた損害は補償対象外です。
以下に該当する方は、対人賠償保険の免責事由とされているため、被害者となった場合でも保険金は支払われません。
ようするに対人賠償保険の場合、一部の例外を除き家族は補償されないと考えていた方が無難です。なお、友人や知人と運転を交代し、その際に事故が発生した場合、友人や知人も補償対象外となります。
ただし、友人や知人が同乗していたときに発生した事故であれば、対人賠償保険では同乗者とみなすため、補償を受けることが可能です。
ちなみに、今回取り上げた5つのケースは、対人賠償保険では補償されないものの、人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、自損事故保険などに加入することで、ある程度はカバーすることが可能です。
そのため、対人賠償保険の補償範囲を正しく理解し、十分な補償を受けることができるようにしておきましょう。
過失割合とは、事故によるお互いの責任割合のことです。基本的には、過去の裁判の判例を基に作成された、ガイドラインを目安に決められています。
車対人の事故の場合、車の過失割合が大きくなるのが通例ですが、歩行者が道路交通法に違反していたとなれば、話は異なってきます。
たとえば、横断が禁止されている道路を渡ったり、信号無視をしたり、歩道があるにもかかわらず車道を歩いていた場合などです。
事故が発生すると、保険会社は必ず実態調査を実施しますが、その際に歩行者に過失があることが認められた場合は、相手の過失分に対して保険金が支払われることはありません。
一方、車対車の事故ですが、車同士が動いている最中に事故が発生するケースが多いため、一方的にどちらかが悪くなることはありません。
停車中の事故であれば、片方だけに過失があることも考えられますが、そのようなケースはそれほど多くはないのが現状です。
なお、実際の保険金の支払われ方ですが、たとえば事故で相手にケガをさせてしまい、500万円の損害賠償が請求されたとします。
10割自分に過失がある場合は、500万円支払うことになりますが、両方に過失があり5対5となった場合、支払う保険金額は250万円です。
また、対人賠償保険よりも自賠責保険から先に支払われるため、残りの不足分を対人賠償保険から支払うことになります。
自賠責保険の場合、ケガによる損害は被害者1名につき120万円までですので、今回のケースだと、対人賠償保険からは130万円支払われるのです。
ここでは、表を使いながら対人賠償と自賠責の違いについてみていくことにします。
まずは以下の表をご覧ください。
自賠責保険 | 対人賠償保険 | ||
---|---|---|---|
保険金を 支払うケース |
自転車の運行により発生した人身事故で、損害賠償責任が生じた場合 | 自動車の所有・使用・管理に起因して発生した人身事故により、損害賠償責任が生じた場合 (自賠責保険より範囲が広い) |
|
補償される 範囲 |
運行供用者、運転者以外の者 ※上記に該当しない場合は、被保険者の父母、配偶者、子の親族間事故も補償される |
左記の事故は補償対象外 | |
被保険者の 範囲 |
保険に加入している自動車の保有者・運転者(対人賠償より範囲が広い) | ・記名被保険者 ・記名被保険者の配偶者 ・記名被保険者または配偶者の同居親族 ・記名被保険者または配偶者の別居未婚の子 ・記名被保険者の業務に従事している使用人 ・記名被保険者の承諾を得て車を使用、管理中の者 |
|
相手に対する 賠償 |
ケガによる損害 (治療関係費、休業損害、慰謝料) |
被害者1名:120万円まで | 自動的に無制限が設定されているケースがほとんど |
後遺障害 (逸失利益、慰謝料など) |
①神経系統の機能、精神、胸腹部臓器への著しい傷害で介護を要する傷害 常時介護:1名4,000万円まで 随時介護:1名3,000万円まで ②上記以外の後遺傷害 1名:第1級3,000万円から第14級75万円まで |
||
死亡による損害 (葬儀費、逸失利益、慰謝料) |
被害者1名:3,000万円まで |
上記の表以外にも、自賠責保険と対人賠償保険にはいくつかの違いがあります。最低限抑えておきたい項目のみ、表にまとめました。中でも、特に注目したいポイントは以下の3つです。
つまるところ、自賠責でカバーしきれなかった部分を、対人賠償保険で補う形となります。特に人身事故は高額な賠償金額となるケースが多いため、自賠責保険だけでは不十分です。
高額な賠償金額となるのは、死亡事故だけに限りません。入院や手術が必要となったり、しばらく働くことが出来なくなった場合も、相当額の賠償金となることがあります。
そのため、基本的な違いを抑えた上で、必ず対人賠償保険に加入するようにしましょう。
結論から言いますと、対人賠償保険は無制限で契約しましょう。なぜなら、人身事故の損害賠償金は、非常に高額な金額となるケースが多いからです。
自賠責保険に加入していれば、対人賠償保険は不要だと考える方もいますが、自賠責保険の補償範囲はそれほど広くありません。
先述したとおり、死亡時は3,000万円まで、後遺障害で常時介護となった場合は4,000万円まで、ケガの場合は最大120万円までしか補償されないのです。
ここで1つ表をご覧ください。こちらの表は、過去の高額賠償事例をまとめたものとなります。
認定総損害額 | 裁判所 | 判決年 | 事故年 | 被害状況 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
5億2,853万円 | 横浜地裁 |
2011年 |
2009年 |
男性41歳 |
医師 |
死亡 |
3億9,510万円 | 名古屋地裁 |
2011年 |
2007年 |
男性20歳 |
学生 |
後遺障害 |
3億8,281万円 | 名古屋地裁 |
2005年 |
1998年 |
男性29歳 |
会社員 |
後遺障害 |
日本損害保険協会公式WEBサイトより引用
上記のような事故は、頻繁に起こるわけではありません。幸い軽いケガだった場合は、自賠責保険のみでも対応できることはあります。
しかし、交通事故は誰も予測できないものです。人身事故の賠償額は被害状況によって変動するため、自賠責保険の補償額を超える損害賠償が請求された際は、賠償責任を果たすことが難しくなります。
また、交通事故による被害者の人数は、1名のみとは限りません。相手の車に複数名の方が搭乗していた場合、人数分の賠償責任を負うこともあります。
そうなると、負担することになる賠償金額は1億円を超えることも珍しくないのです。そのため、自賠責保険だけに頼るのではなく、必ず対人賠償保険に加入していた方が安心できます。
ちなみに、保険会社によっては、強制的に対人賠償保険へ加入することになっていたり、無制限のみとしているケースがほとんどです。対人賠償保険を無制限に設定しても、保険料が高額になることはありません。
保険会社がWEB上で提供している、見積もりツールで試してみると分かりますが、設定を無制限以外へ変更しても、数百円程度しか保険料は変わらないのです。
そのため、万が一の事故に備えるためにも、対人賠償保険の上限は必ず無制限で契約するようにしましょう。
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