事故で車が全損した場合、受け取れる車両保険金はどのくらいなのでしょうか。また、修理と買い替えを検討する際のポイントについても、事前に抑えておきたいものです。
そこで今回は、全損時に支払われる車両保険金について取り上げながら、全損・分損の定義、全損時の補償を充実される特約など、詳しく解説していきます。
事故で車が全損し車両保険を使った場合、支払われる車両保険金は「協定保険価額」、もしくは「契約車両の時価額」のいずれか低い方の金額となります。
車両保険の保険金額は、保険契約をした時点の契約車両の時価によって決まるものです。保険契約をした時点の契約車両の時価のことを、「協定保険価額」といいます。
協定保険価額は、保険契約期間中(一般的には1年)に変動することはありません。厳密にいうと、若干変わることもありますが原則変動しないものです。
協定保険価額はどのようにして決まるのかというと、契約車両の市場販売価格相当額を参考にしています。保険会社では、オートガイド社が発行している「オートガイド自動車価格月報」を基準としているケースがほとんどです。
通称「レッドブック」と呼ばれており、東京地区の中古車市場価格の平均価格を集計した結果がまとめられています。なお、掲載されている平均価格の内容は、車の年式、車種、グレードごとの小売価格、下取価格、新車価格、卸売価格です。
以上のことから、事故で車が全損して車両保険を使った場合は、「協定保険価額」もしくは「契約車両の時価額」のいずれか低い方の金額が支払われると覚えておきましょう。
全損は大きく分けると3つあります。それぞれの概要について、詳しく見ていくことにしましょう。
物理的全損とは、修理することが困難なほど壊れてしまった状態のことを指しています。物理的全損となった場合は、廃車となるケースがほとんどです。
経済的全損とは、修理をすることは可能なものの、修理費用が車両保険の上限額を越えてしまう状態を指しています。
前項で触れたとおり、車両保険の金額は契約時点の協定保険価額によって決まるものです。たとえば車両保険の上限が100万円だった場合、保険会社は100万円、もしくは契約車両の時価額いずれか低い方の金額までしか補償しません。
ここでのポイントは、「全損にするか」「修理をして乗り続けるか」選択することです。全損にしてしまうと、車の所有権が保険会社に移るため、引き続き車に乗り続けることが出来なくなります。
そのため、修理をして乗り続けるのであれば保険会社に事情を説明し、残存価値を引いた残りの金額を保険金として受け取ることになるのです。
車を盗まれてしまい、発見されない状態のときも全損使いとなります。受け取ることができる保険金は、車両保険の上限額までです。なお、保険金を受け取った時点で、車の所有権は保険会社に移ることになります。
分損とは、全損以外の損害状態のことを指します。修理費用が車両保険の範囲内に収まるケースは、すべて分損といっても過言ではありません。
保険会社から支払われる保険金は、実損に応じた金額となりますが、免責(自己負担金)を設定している場合は注意が必要です。免責を設定することで保険料は安くなりますが、保険金を受け取る際は「免責を差し引いた残りの金額」が支払われます。
たとえば、車両保険の上限額が100万円、免責が10万円、修理費用が80万円だったとします。この場合、80万円から免責の10万円を引いた、70万円が保険金として支払われるということです。
一方、車両保険の上限額が100万円、免責が10万円、修理費用が15万円といったように、修理費用があまり高くはない場合、免責を差し引くと少額しか支払われないこともあります。
事故で車両保険を使うと、翌年の契約時に3等級ダウンして大幅に保険料がアップすることがほとんどです。そのため、自己負担できる程の修理代となる場合は、保険を使わないことも検討しましょう。
全損で受け取ることができる保険金の金額は、修理する場合と買い替える場合で少々異なります。また、車の損傷具合によって、修理よりも買い替えた方がお得になることがあるものです。
全損となった場合は、修理するかしないかにかかわらず、車両保険の上限額一杯、もしくは契約車両の時価額のいずれか低い方の金額が支払われます。その際、免責を設定していたとしても免責分は差し引かれません。
ここでのポイントは、保険金を受け取った時点で、契約車両の所有権が保険会社に移ってしまうということです。修理をして乗り続けたいのであれば、前述したとおり保険金から契約車両の残存価値分を差し引いてもらう必要があります。
また、全損で修理をするということは、車両保険の上限額よりも修理代の方が高いということです。保険金で賄うことが出来ない修理代は、自腹で対応するしかありません。
ただし、このあと詳しく解説する「車両全損修理時特約」があれば、車両保険金額に30万円、もしくは50万円(保険会社によって異なる)を上乗せした金額が支払われるため、自己負担を軽減することができます。
受け取ることができる保険金は、全損で修理する場合と同様、車両保険の上限額一杯、もしくは契約車両の時価額いずれか低い方の金額となります。
契約車両が全損となった場合、修理よりも買い替えた方が得かどうかは、いくつかのポイントを比較検討することが重要です。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
修理よりも買い替えた方が得か判断するポイント |
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①買い替える際の車の購入費用 ②保険会社が提携している修理工場以外での修理見積もりの金額 ③事故車となった契約車両の買取り査定見積金額 ④無事故だった場合の契約車両の買取り査定見積金額 ⑤契約車両を修理した場合に事故歴車扱いとなるか ⑥修理をすれば今まで通り問題なく走ることができるのか |
以上のポイントを確認しながら、総合的に判断しましょう。たとえば、修理をして乗り続けるとしても、損傷した箇所によってはあまり長く乗ることができないケースがあります。
その場合、早いタイミングで買い替えた方がお得です。ようするに、現時点で掛るコストや事情だけで判断するのではなく、先のことも考えた上で修理をするか買い替えるかを判断した方が得策だといえます。
全損時の補償を充実されるために、付帯しておいた方が良い特約があります。今回は2つの特約についてご紹介することにしましょう。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
新車特約と呼ばれることもあります。保険契約をしている車を、新車とみなして保険金を受け取ることができる特約です。
契約時に設定された金額の範囲内で、新車を購入する費用に充てることができます。主な適用条件は、以下の3つです。
適用条件 |
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・新車で買った車が全損になった ・修理費用が新車価格相当額の50%以上となった ・保険始期日が属する月が初度登録年月から一定期間以内となっている |
3つ目の「一定期間内」ですが、たとえばセゾン自動車火災の場合は25ヶ月以内、イーデザイン損保は11カ月以内など、保険会社ごとで若干異なります。
また、車両新価特約はすべての保険会社で扱っている特約ではないため、契約時に確認しておきましょう。
廃車費用、買い替え時に必要となる諸費用をカバーすることができる特約です。車両保険金を受け取る際、30万円もしくは50万円程度が上乗せされます。
金額は保険会社ごとで異なるため、事前に確認しておくようにしましょう。また、車両全損修理時特約は、契約車両を修理する場合のみ適用される特約です。修理をしないときは支払われないため注意してください。
それから、車両新価特約との同時利用、地震による津波・噴火・陥没で全損となった際の利用も不可となっています。
保険会社は、全損金額を低く提示する傾向にあります。そこでこの項では、「なぜ保険会社は全損金額を低く提示するのか」「全損金額を引き上げるためにはどうしたらよいのか」について、詳しく解説していきます。
主な理由は3つあります。
レッドブックに掲載されている価格は、実施に市場に出回っている中古車販売価格よりも5万円から10万円ほど低めに設定されています。そのため、保険会社が提示する全損金額もおのずと低くなってしまうのです。
やるべきことは、「立証書類を保険会社へ提出して交渉をする」だけです。立証書類は、主に2種類あります。
中古車販売サイト(カーセンサー)にて、事故車となった契約車両と同等の車が、どのくらいの車両本体価格で販売されているのか確認しましょう。
車両本体価格の平均額を調べるための作業となるため、最低でも10台以上の車両本体価格をピックアップしたいものです。
なお、立証書類の形式は決まっていないため、該当のページをプリントアウトして、保険会社に提示するだけで問題ありません。
事故車となった契約車両と同条件の中古車が、どのくらいの価格で販売されているのか調べてみましょう。平均的な購入価格が分かれば、全損金額アップの交渉をする際に役立ちます。
立証書類の作り方は、とても簡単です。①でピックアップした車を販売している中古車業者に、見積もりを依頼するだけとなります。
見積書には法的な効力はありませんので、実際に購入する必要はありません。可能な限り、複数社の見積もりを取るようにしましょう。
見積書が揃ったら、そのまま保険会社に提出して全損金額アップの交渉をしてください。ちなみに、立証書類として過去の裁判例を提示する方法も有効ですが、調べるのに手間が掛るため最終手段とすることをお勧めします。
私は年間で57,230円の保険料を支払っていましたが、保険スクエアbang!という一括見積もりサイトを利用して、保険料を20,630円まで安くすることに成功しました。
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