車が盗難被害に遭った場合、車両保険に加入していれば補償を受けることができます。ただし、一部のケースで補償対象外となる他、補償されない物品などが存在するため、注意が必要です。
そこで今回は、車の盗難と車両保険について取り上げながら、車両保険の補償範囲、盗難で車両保険を使う際の注意点、近年の盗難被害の特徴など詳しく解説します。
車両保険は、『一般型』『エコノミー型』の2種類に分かれており、『一般型』『エコノミー型』どちらに加入しても、盗難による被害を補償して貰うことは可能です。
ただし、『他車との衝突・接触・追突』のみ補償範囲となるエコノミー型に加入している場合は、盗難に遭っても車両保険を使うことはできません。
また、保険会社によっては一部の型式の車については「車両盗難不担保特約」が付帯され、盗難による損害は補償されないケースがあるので、契約前にチェックしておいた方が良いでしょう。
「車両盗難不担保特約」とは?
保険会社が決めた一部の型式の車について、車両の盗難による損害を、補償の対象外とする特約。どの車がこの特約の対象になるかについては、保険会社ごとに異なるので、保険会社に問い合わせて確認してください。
盗難の被害に遭って車が戻ってこない場合、全損扱いとなります。そのため、『協定保険価額(契約時に決めた補償上限額)』までを上限として、保険金が支払われます。
なお、全損扱いの場合、免責を設定していても免責額は適用されませんので、自己負担は発生しません。。
協定保険価額は、車の現在の価値のようなものです。古い車の場合、協定保険価額が低いことから、あまり多くの保険金が支払われないことがあります。
また、車両保険を使ったからといって、盗難の被害を全額カバーできるとは限りません。これらの要素を踏まえた上で、車両保険を使うようにしてください。
まず付属品の補償ですが、ボルトやねじなどで車に固定されているされており、簡単に取り外すことができない装備なら補償されるます。
たとえば、固定されているカーナビ、スペアタイヤ、標準工具、タイヤのホイール、タイヤ、ナンバープレート、バンパーなどの盗難被害は、車両保険の補償範囲となります。
実際に補償される際は、時価相当が補償されることになるため、購入したときと同じ金額が補償されるわけではありません。
領収証、保証書があれば、保険金請求時の手続きがスムーズになるため、車外の分かりやすい場所に保管しておきましょう。
次に貴重品に関してですが、車両保険では貴重品の補償は行っていません。ただし『車両身の回り品補償特約』を付帯している場合、一部の貴重品のみ補償範囲となることがあります。たとえば、バッグ、カメラ、ゴルフ道具、衣類などです。
現金やスマホなどは補償範囲外となっており、車内に積んでいたからといって、全ての身の回り品が補償されるわけではありません。
補償範囲を確認した上で、『車両身の回り品補償特約』を付帯するか決めることをお勧めします。
参考までに、「おとなの自動車保険」の「車両身の回り品補償」の補償範囲を下記に掲載しましたのでご覧ください。
補償の対象となる主な身の回り品 |
---|
・衣類、バッグ ・カメラ ・楽器 ・ゴルフ用品 ・スキー用品、スノーボード、サーフボード、スキューバダイビング用品 ・旅券(パスポート)、運転免許証 など |
補償の対象とならない主な身の回り品 |
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・自動車に定着、固定、装備されている物で、自動車の付属品と見なされる物 ・通貨、有価証券(小切手、定期券、航空券、商品券、プリペイドカードなど) ・貴金属、宝石、骨董、美術品 ・設計書、図面、稿本、帳簿など ・ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末 ・コンピューター等の記録媒体に記録されているプログラムやデータ ・義歯、コンタクトレンズ、眼鏡 ・動物、植物 ・船舶 など |
車上荒らしの場合は、車両そのものが盗難に遭ったわけではないため、保険を使って補償を受けることはできません。
ただし、固定されていたカーナビやETCなどの付属品が盗まれた場合、その部分のみ補償を受けることは可能です。
先ほど取り上げた『車両身の回り品補償特約』に関しては、保険会社によって車上荒らしを補償範囲としていないケース、補償範囲となっているケースに分かれるため、事前に確認しておきましょう。
ちなみに、おとなの自動車保険の『車両身の回り品補償特約』では、車上荒らしは補償対象外となります。
車両保険の補償対象にならないケースがいくつかあるため、以下にピックアップしました。
※車両身の回り品補償特約も同じ
※車両身の回り品補償特約を付帯していると一部の持ち物は補償対象となる
※ポータブルタイプのカーナビは補償対象外
※タイヤ、ホイールなど
以上が補償の対象にならないケースでした。一般的に、自分に過失がある場合は補償されないことがほとんどです。
など
上記のケースの場合、盗難事故を未然に防ぐことができるものです。そのようなときは、車両保険を使うことはできません。
車両保険を盗難で使った場合、1等級ダウン事故扱いとなります。更新後の等級が1つ下がり、事故有係数適用期間が1年間となるため、更新後は事故有りの低い割引率が適用されます。
ただし、更新してから1年間のあいだ無事故で過ごすことができれば、翌年1つ等級が上がり、事故無しの割引率に戻ります。
盗難で車両保険を使う際、注意したいことは2つあります。
早めに警察と保険会社に連絡をしましょう。被害届を出すのが遅れてしまうと、保険金詐欺などの疑いをかけられてしまうことがあります。
また、保険会社が実施する盗難被害の調査は時間がかかるだけではなく、保険金受取に1カ月以上掛ることも少なくありません。
そのため、できるだけ早く警察に被害届を出し、保険会社に調査を開始して貰うことをお勧めします。
保険金を受け取ったあと、60日以内(保険会社による)に盗難車が発見された場合、保険金を全額返還することで車を取り戻すことができます。
稀なケースではありますが、早期に見つかれば戻ってくる可能性はあることを覚えておきましょう。
なお、車が見つかった際、すでに受け取った保険金を返還する必要はありません。
警察庁の国土交通省等官民合同プロジェクトチームが発表した情報によると、自動車盗難は減少傾向にあるようです。しかし、特定の地域で多発しているため、依然警戒が必要だといえます。
警察庁が発表した、最近の盗難被害の特徴は以下のとおりです。
警察庁が運営する『STOP THE 自動車盗難』で公開されていた、車種別の盗難件数ランキングは以下のとおりです。
メーカー | 車種 | 盗難台数 | 盗難率(千台比) |
---|---|---|---|
トヨタ | ハイエース ※レジアス含む |
1,391台 |
1.7% |
トヨタ | プリウス |
1,058台 |
0.6% |
トヨタ | ランドクルーザー |
510台 |
2.3% |
いすゞ | エルフ |
377台 |
0.5% |
トヨタ | アクア |
371台 |
0.4% |
参照:警察庁『STOP THE 自動車盗難』
上記は、2016年度の自動車盗難データです。ハイエースとプリウスが断トツで多いことが分かります。続いて、もう1つ参考までにこちらの図をご覧ください。
日本損害保険協会が行った『2016年度 自動車盗難事故実態調査』から引用したデータです。車両本体の盗難件数が多い順に並べました。
なお2016年11月までの間に、保険会社が車両保険を支払った保険事故のみ扱っています。
順位 | 車種 | 件数 | 構成比 |
---|---|---|---|
1 | プリウス |
59件 |
19.7% |
2 | ハイエース |
43件 |
14.3% |
3 | ランドクルーザー |
28件 |
9.3% |
4 | アクア |
27件 |
9.0% |
5 | レクサス |
16件 |
5.3% |
6 | インプレッサ |
14件 |
4.7% |
7 | クラウン |
12件 |
4.0% |
8 | アルファード |
7件 |
2.3% |
カローラ |
7件 |
2.3% |
|
10 | スカイライン |
6件 |
2.0% |
フォワード |
6件 |
2.0% |
|
12 | BMW |
4件 |
1.3% |
インテグラ |
4件 |
1.3% |
|
ハイゼット |
4件 |
1.3% |
|
ベンツ |
4件 |
1.3% |
|
16 | ヴェルファイア |
3件 |
1.0% |
マークX |
3件 |
1.0% |
出典:『2016年度 自動車盗難事故実態調査』
以上2つの資料から『プリウス』『ハイエース』『ランドクルーザー』が盗難被害に遭いやすいことが分かりました。ちなみに、上記はイモビライザーが導入された状態での盗難件数です。
イモビライザーとは、専用の鍵にICチップが埋め込まれており、キーのIDと車のIDが一致しないときは、エンジンが掛らない盗難防止装置のことを指します。
防犯対策として一定の効果を期待することはできますが、イモビライザーが搭載された車であっても、上記に該当する車は注意が必要だということです。
安全装置割引は、普及が進むといずれ廃止される割引制度です。廃止されたあとは、型式別料率クラス(保険料を細分化する仕組み)に反映されるため、複数の安全装置が搭載されている型式の車に乗っている人ほど、自動車の保険料は安くなります。
なお、これまで様々な安全装置割引がありましたが、現在扱っている保険会社はほぼありません。
たとえば、イモビライザーの場合、ニッセイあいおい同和損保とマイカー共済では2017年8月現在も割引を扱っていますが、近々廃止されると考えていた方が無難です。
ちなみに、今まで保険会社が取り扱ってきた安全装置割引の一部を、以下にまとめてみました。
など
割引率は5%から10%となっています。なお、2018年1月1日より自動ブレーキ機能を搭載した車を対象とした安全装置割引が始まります。実施期間は3年間となっており、のちに廃止される予定です。
以上のことから、現在はほとんどの保険会社で安全装置割引を扱っていないものの、自動ブレーキのような新開発の装備が誕生すれば、新しい安全装置割引が登場する可能性は十分あります。
自動車の所有者に全く落ち度がない盗難事故の場合、盗難車が事故を起こしたとしても所有者が賠償責任を負うことはありません。
所有者が賠償責任を負う可能性があるのは、所有者の過失によって盗難事故に遭った場合です。
たとえば、ドアロックをせずにコンビニに買い物へ行ったり、エンジンを掛けた状態で車をしばらく放置していたなどが該当します。
賠償責任は、裁判所が『過去の事案・事故の状況・個々の事情』を含めた上で、検討されるものです。また、盗難被害からどのくらい日数が経過しているかも参考とされます。
賠償責任が問われるような事態に陥った場合は、すぐに弁護士や保険会社へ相談することをお勧めします。
盗難車が事故を起こした場合、自動車保険が適用されるかどうかは、契約車両の所有者が賠償責任を負うかどうかによって異なります。
契約車両の所有者に賠償責任が無い場合、利用できるのは車両保険のみです。これまで解説してきたとおり、車両ごと盗まれたときは全損扱いとなるため、市場評価額を上限として車両保険が支払われます。
契約車両の所有者に賠償責任がある場合、自賠責、対人・対物賠償、車両保険が適用されます。自賠責、対人・対物賠償は、被保険者が賠償責任を負ったときに適用される保険であるため、利用することができるのです。
一方、賠償責任があるときに適用されない保険は、人身傷害保険と搭乗者傷害保険です。この2つの保険は、適用条件の中に『契約車両を使う際、運転者は正当な権利を持つ人から承諾を得ること』とあります。
盗難車の場合、正当な権利を持つ人から承諾を得ていることはないため、人身傷害保険と搭乗者傷害保険を使うことはできないのです。
私は年間で57,230円の保険料を支払っていましたが、保険スクエアbang!という一括見積もりサイトを利用して、保険料を20,630円まで安くすることに成功しました。
保険スクエアbang!は、見積もり結果がブラウザ上に表示されるので、すぐに保険料を知りたい方にはかなり便利なサービスだと思います。
ちなみに、難しいことは一切していません。5分くらいで出来てしまいました。見積もりサービスと聞くと、資料が大量に送られてくるんじゃないの?電話などの勧誘やセールスがくるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そんなことは一切ありませんでした。