車上荒らしの被害は、窓ガラスの破壊、ドアロックの破壊、車内に置いてあった金品の盗難など多岐に亘ります。車上荒らしが原因で損害が生じた場合、車両保険でカバーすることはできるのでしょうか。
結論からいいますと、「契約車両本体」「契約車両に装備品されているモノ」の損害であれば、車両保険で補償されます。車上荒らしの被害に遭った際、車両保険に入ってない場合は補償されません。
なお車両保険で補償されるとはいえ、補償範囲は決まっています。次項で詳しくみていくことにしましょう。
車両保険は、「一般型」と「エコノミー型」に分かれており、どちらのタイプでも車上荒らしの盗難をカバーすることはできます。
一般型とは、幅広い損害をカバーすることができるタイプ。エコノミー型とは、補償範囲が限定されるものの、保険料の負担を軽減することができるタイプのことです。
保険会社によっては、エコノミー型の補償範囲を細分化し、「車対車の事故で損害が生じた場合のみ補償するタイプ」を提供していることがあります。その場合、車上荒らしによる損害は補償されないため注意しましょう。
契約内容を把握していない方は、事前に確認しておくことをお勧めします。なお、前述したとおり「一般型」「エコノミー型」共に車上荒らしによる補償範囲は限定されています。
また、保険会社ごとでも補償範囲は若干ことなるものです。一般的な補償範囲を以下にまとめましたので、参考にしてください。
など
など
ようするに、車上荒らしで現金が盗難被害に遭ったり、車に定着装備されていないモノが盗まれた場合、車両保険では補償されないということです。
車両保険の補償範囲は、保険会社の約款や重要事項説明書などに記載されています。事前に詳細を確認しておきましょう。
車両保険を使う場合、必ず警察への届出が必要となります。車上荒らしの被害に遭った際は、早急に警察へ連絡をしましょう。警察に被害届を出していないと、車両保険で補償されないケースがあります。
なお警察に連絡をしたあと、保険会社に事故報告の連絡をしますが、保険金受取までの流れはその際に案内して貰うことが可能です。確認したいことや不安なことがあれば、保険会社に相談することをお勧めします。
車上荒らしによる損害で車両保険を使った場合、1等級ダウン事故扱いとなります。翌年の契約更新時に等級が1つ下がり、事故有りの割引率が適用されるため保険料は割高となるのです。
実際にどのくらい保険料が割高となるのか、ソニー損保のシミュレーションツールを使用して保険料を算出してみました。
現在の等級:12等級
現在の保険料:6万円
年 | 保険を使った場合 | 保険料を使わなかった場合 | ||
---|---|---|---|---|
等級 | 保険料(イメージ) | 等級 | 保険料(イメージ) | |
次年度 | 事故あり11等級 |
87,000円 |
無事故13等級 |
59,000円 |
2年後 | 無事故12等級 |
60,000円 |
無事故14等級 |
58,000円 |
合計額(概算) | 147,000円 |
117,000円 |
上記のとおり、3万円異なることが分かります。以上のことから、車両保険を使って損害をカバーする際は、損害額、修理費用、翌年以降の保険料の値上がり分を必ず確認し、車両保険の利用を検討しましょう。
免責額とは、自己負担する金額のことです。たとえば契約時に免責額を5万円に設定した場合、損害額から5万円を差し引いた残りが保険金として支払われます。
損害の程度が小さく損害額が免責金額の範囲内に収まるときは、車両保険を使うことができないため注意しましょう。
また、免責額を越えた額が保険金として支払われるため、その点も併せて注意が必要です。たとえば免責額5万円・修理費用7万円の場合、保険会社から支払われる保険金は2万円となります。
あくまでも一例ですが、車上荒らしによる損害で窓ガラスを修理する際、5万円以下の修理費用となるケースが少なくありません。
車によって修理費用は異なりますが、コンパクトカークラスであれば、窓ガラスを交換したとしても1枚3万円~4万円 ほどです。
上記のケースのように、支払われる保険金が少額となる場合は、自腹で修理することも検討しましょう。
身の回り品特約とは、事故で契約車両内やトランク内に積んでいたモノが損傷した際、その損害が補償される特約です。車両保険加入時に付帯することができます。
前述したとおり、車両保険で身の回り品の損害をカバーすることはできませんが、「身の回り品特約」を付帯しておけば安心です。
ただし、保険会社によって身の回り品特約の適用条件は異なります。特に抑えておきたいポイントは、以下の2点です。
たとえばセゾン自動車火災の場合、車上荒らしによる身の回り品のみの盗難被害は、身の回り品特約で補償されません。契約をする際は、保険会社の適用条件を必ず確認しておきましょう。
なお、補償金額は保険会社ごとで異なりますが、10万円~30万円の範囲で設定されています。参考までに、補償金額と免責額を以下の表にまとめました。
保険会社名 | 補償金額 | 免責金額 |
---|---|---|
ソニー損保 | 10万円 |
5,000円 |
SBI損保 | 30万円 |
3,000円 |
イーデザイン損保 | 30万円 |
5,000円 |
そんぽ24 | 20万円 |
免責設定はあるものの金額は不明 |
セゾン自動車火災 | 10万円、30万円、50万円 |
不明 |
あいおいニッセイ同和損保 | 30万円 |
不明 |
損保ジャパン日本興亜 | 30万円 |
なし |
身の回り品特約で補償される身の回り品の内容は、保険会社ごとで若干異なります。たとえばセゾン自動車火災の場合は以下のとおりです。
補償対象となるモノ | 補償対象とならないモノ |
---|---|
・衣類、バッグ ・カメラ ・楽器 ・ゴルフ用品 ・スキー用品、スノーボード、サーフボード、スキューバダイビング用品 ・旅券(パスポート)、運転免許証 など |
・自動車に定着、固定、装備されている物で、自動車の付属品と見なされる物 ・通貨、有価証券(小切手、定期券、航空券、商品券、プリペイドカードなど) ・貴金属、宝石、骨董、美術品 ・設計書、図面、稿本、帳簿など ・ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末 ・コンピューター等の記録媒体に記録されているプログラムやデータ ・義歯、コンタクトレンズ、眼鏡 ・動物、植物 ・船舶 など |
セゾン自動車火災公式WEBサイトより引用
上記の内容からも分かるとおり、車上荒らしにあったら財布などの貴重品は補償されません。
車上荒らしで車両保険を使った場合も同様に、現金やクレジットカードなどの貴重品は補償されないため、常に身につけておくことをお勧めします。
警視庁の公式WEBサイトでは、「自動車盗・車上ねらいの防犯対策」として対策方法について案内しています。要点を以下にまとめました。
車を駐車する場所によって、車上荒らしの被害に遭う確率は大きく異なります。まずは以下の表をご覧ください。こちらは警視庁が発表した、「車上ねらい(車上荒らし)発生場所」の発生率をまとめたものです。
車上ねらい発生場所 | 発生率 |
---|---|
駐車場・駐輪場など | 36.2% |
道路上 | 34.5% |
住宅 | 17.3% |
都市公園 | 5.5% |
商店など | 2.0% |
会社・事務所 | 1.7% |
学校(幼稚園) | 0.5% |
飲食店など | 0.3% |
その他 | 2.1% |
ご覧のとおり、道路上は34.2%と発生率が2番目に高いことがあります。そのため、路上に駐車したまま車を放置しないように気をつけましょう。
ごく短時間のみ車から離れる場合であっても、必ずキーを抜いてドアロックをしましょう。
貴重品等の高価なモノを車内に置きっぱなしにしていると、ドアロックをしていても簡単に持ち去られてしまうことがあります。また車上荒らしで保険を使ったとしても、クレジットカードなどの貴重品は補償されません。
車から離れる際は、必ず身につけて離さないようにしましょう。
少々手間は掛りますが、取り外し可能なカーナビやETCカードなどは、できるだけ自宅に持ち帰ることをお勧めします。
「①路上に放置駐車しない」のところでご紹介した表を、今一度ご覧ください。車上ねらい発生場所の第一位は、駐車場・駐輪場などです。駐車場が自宅から離れている場合は、盗難対策を徹底しましょう。
たとえば、パーキングモードが搭載されたドライブレコーダー、カーセキュリティー、ハンドルロック、タイヤロック、GPS機能付位置探査装置などがあります。駐車場が自宅から離れていない場合は、防犯カメラやセンサーライトを設置するのも一考です。
また車上荒らしの被害のほとんどは、屋外の駐車場で発生しています。自宅・外出先問わず、できるだけ屋内の駐車場を利用してください。
イモビライザーとは、盗難防止システムの1つです。専用キーに電子チップが埋め込まれており、専用キーと車両側のIDコードが一致しないと、エンジンが起動しない仕様となっています。
IDコードは暗号化されているため、簡単に解読することはできません。車の買い替えを検討している方は、イモビライザーが装備された車に乗り換えるのも一考です。
たとえば、照明設備が整っている駐車場や、管理人が常駐しており防犯カメラが設置されている駐車場などは、車上荒らしの被害に遭遇しづらくなります。
警察庁によると、車上ねらいの認知・検挙件数は減少傾向にあるようです。まずは以下の図をご覧ください。
警察庁「平成28年度 犯罪情勢」より引用
警察庁が発表した平成28年の「犯罪情勢」によると、平成28年度の車上荒らしの認知件数は59,974件。検挙件数は11,650件でした。認知件数が6万件を下回ったのは、昭和36年以来のことです。
また、認知件数を車両11万台当たりでみた場合、平成28年度と平成19年度の件数は1/3ほど異なることが分かります。つまり、車上荒らしの被害は完全になくならないものの、認知件数は減少傾向にあるのです。
認知件数が減少した理由は、イモビライザー搭載車の普及が急速に進んだことにあります。海外とは異なり、日本ではイモビライザーの装備が法律で義務付けられていません。
この先、法律が改正されてイモビライザーの装備が義務付けられた場合、さらに認知件数が減少する可能性は高いといえます。
それから、上図の「認知件数(件)施錠あり」「認知件数(件)施錠なし」の箇所をご覧ください。ようするにドアロックの有無を表していますが、平成28年度の場合、施錠あり29,460件、施錠なし30,514件でした。
施錠だけでは、防犯対策として不十分だということが分かります。そのため前述した防犯対策を取り入れながら、車上荒らしに備えるようにしましょう。
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