車両の火災事故は頻繁に発生するものではありませんが、万が一、放火やもらい火で火災の被害に遭った場合、車両保険で補償されるのでしょうか。
そこで今回は、車両火災と車両保険の補償内容について取り上げながら、車両保険の補償範囲、車両保険の火災で支払われる保険金など、詳しく解説していきます。
放火やもらい火などで車が全焼した場合、契約時に設定した車両保険金の範囲でカバーすることは可能です。また、周囲に延焼してしまったときは、対人・対物保険を使って賠償することもできます。
火災保険では、車の損害に関する修理を補償しておらず、すべて自動車保険で対応することになるのです。
総務省消防庁が発表した「平成28年(1月~12月)における火災の状況」によると、平成28年度の出火件数は36,773 件でした。つまり、1日あたり100件程度の火災が発生していることになります。
その内、車両火災は4,041件と全体の11%を占めており、件数としては1割程度と多くはありません。とはいえ、万が一の事態に備えて、車両保険に加入しておいた方が安心できるといえます。
特に新しく車を購入した方は、火災以外の事故リスクにも備えて、車両保険に加入しておきたいものです。
前述したとおり、車両火災は車両保険でカバーすることができる損害です。車両保険は「一般型」「エコノミー型」の2タイプに分かれますが、そのどちらであっても補償されます。
補償されるケース | 一般型 | エコノミー型 |
---|---|---|
火災・爆発 | 〇 |
〇 |
ただし、そんぽ24、セゾン自動車火災などの一部の保険会社では、車両保険の補償内容が他社とは少々異なります。
特にセゾン自動車火災においては、車両保険の補償の組み合わせが全部で9種類に分類されているため、選択した種類によって火災による損害が補償されないことがあります。
参考までに、セゾン自動車火災の車両保険タイプ別補償内容を表にまとめました。
条件 | 火災・落書き・台風 |
---|---|
1.一般車両 |
〇 |
2.一般車両 盗難対象外 |
〇 |
3.一般車両 水災対象外 |
〇 |
4.一般車両 盗難、水災対象外 |
〇 |
5.車対車+A |
〇 |
6.車対車+A 盗難対象外 |
〇 |
7.車対車+A 水災対象外 |
〇 |
8.車対車+A 盗難、水災対象外 |
〇 |
9.車との衝突のみ |
× |
車との衝突のみ補償される車両保険に加入している場合、火災による損害は補償されないことが分かります。
車両保険の補償範囲については、保険会社の公式WEBサイトで必ず案内されているため、契約前に目を通しておくようにしましょう。
車両保険を使っても、補償されないケースがいくつかあります。保険会社ごとで内容は若干異なりますが、一般的には以下の3つのケースが挙げられます。
不法改造とは、たとえば灯火類の色を法律で決められた以外の色に変更している場合や、タイヤ・ホイールが車体からはみ出している場合などが該当します。
車両保険を使った際、必ず保険調査員が車の損傷状態を調査しますが、そのときに不法改造車とみなされてしまうと、車両保険では補償されないため注意しましょう。
また、自作で装飾・修繕・配線したものなどが燃えた場合、不法改造と判断されるかどうかはケースバイケースです。
LEDの配線間違いによる火災、配管からオイルが漏れて延焼した火災など、調査の結果によっては不法改造や整備不良と判断されて補償対象外となることがあります。
競技、曲技等で車を使用・練習中に契約車両が損傷したことによる損害は、車両保険の補償対象外となっています。また、使用・練習だけではなく、競技、曲技等を目的とした場所で車を使用した際の損害も補償対象外です。
競技とは、山岳ラリー、タイムラリー、サーキットレース等。曲技とは、サーカスやカースタント等のことを指します。
ちなみに、東京海上日動や富士火災では、「競技・曲技等使用危険補償特約」を扱っており、付帯することで火災による損害が補償される可能性があります。詳細は各保険会社に相談の上、確認をしてください。
一部の自然災害による損害は補償されますが、地震・噴火・津波が原因で損害が生じた場合、車両保険で補償されません。ただし、「地震・噴火・津波危険 車両全損時一時金特約」を付帯している場合は補償されます。
「地震・噴火・津波危険 車両全損時一時金特約」は、アクサダイレクトなどの一部の保険会社で取り扱っていますので、事前に確認しておくことをお勧めします。
車両火災の損害の内容は、総務省消防庁「平成28年(1月~12月)における火災の状況」の車両出火原因のデータを見ることで、おおよそ把握することができます。まずは以下の表をご覧ください。
原因別 | 件数 | 構成比 |
---|---|---|
排気管 | 671 |
16.6% |
交通機関内配線 | 385 |
9.5% |
放火 | 305 |
7.5% |
電気機器 | 172 |
4.3% |
たばこ | 159 |
3.9% |
電気装置 | 145 |
3.6% |
放火の疑い | 130 |
3.2% |
内燃期間 | 127 |
3.1% |
衝突の火花 | 127 |
3.1% |
マッチ・ライター | 95 |
2.4% |
配線器具 | 60 |
1.5% |
たき火 | 30 |
0.7% |
電灯電話等の配線 | 24 |
0.6% |
溶接機・切断機 | 20 |
0.5% |
こんろ | 19 |
0.5% |
火入れ | 15 |
0.4% |
焼却炉 | 14 |
0.3% |
取灰 | 5 |
0.1% |
その他 | 900 |
22.3% |
不明・調査中 | 638 |
15.9% |
合計 | 4041件 |
総務省消防庁「平成28年(1月~12月)における火災の状況」より引用
上記の内容から、「排気管系統」「整備不良」「放火」「電気系統の配線」が主に原因となって出火していることが分かります。
最も多かったのは排気管系統の火災ですが、整備不良や可燃物の付着によって出火するケースが多いようです。
排気管はエンジンから排出された高温ガスが通るため、ちょっとしたきっかけで火災が発生することが少なくありません。
車検以外のタイミングでも点検や整備をしたり、異物などを避けて運転をすることで火災の予防につながります。
なお、車両保険で補償されるのは、契約車両本体と付属品のみです。付属品とは、定着装備されたカーナビ、ETC車載器などのことを指します。
付属品は車に定着固定されているモノのみ補償範囲となっていますが、火災によって損害が生じた場合は、定着固定されていなくても補償されることがあるようです。詳細は保険会社に確認しておきましょう。
放火やもらい火などで車が全焼した場合、修理をすることができないほど損傷することがほとんどです。つまり、全損扱いとなることから、保険契約時に設定した車両保険金額の全額が支払われます。
免責額(自己負担額)を設定していたとしても、免責分が差し引かれることはありません。一方、全焼とまではいかず、修理をして乗り続けることができる場合は、保険契約時に設定した車両保険金額の上限額を限度に、実際の修理費用が支払われます。
免責額を設定している方は、修理費用から免責額を差し引いた残りの分が支払われるため、全損とは扱いが異なることを抑えておきましょう。
なお、放火が原因で車が全焼したり、メーカー・整備工場の整備不良や部品の欠損等が原因で車両火災が発生した場合、相手に対して損害賠償を請求することができます。
ただし、保険金を受け取る前、受け取った後のどちらのタイミングで請求するかによって対応は異なるため注意が必要です。
結論からいいますと、相手方に故意・重大な過失がない場合、火災の原因が相手にあったとしても損害賠償を請求することはできません。
火災による損害賠償責任は、失火責任法で詳しく定められており、一般的な損害責任とは異なる扱いとなっているからです。
そのため、車が全焼したり壊れてしまった場合は、自分の車両保険でもらい火による損害をカバーするか、自腹で対応するしかありません。
車両保険金目当てで、自分の車に放火をする車両火災は多いといわれています。理由はいくつか考えられますが、車両の放火は一般的な放火よりも、保険の審査が厳しくないことが関係しているようです。
そもそも車両火災の場合、出火の原因を特定する調査は行いません。あくまでも、火災による損害額を査定するために、調査を実施するだけとなります。
そのため、他の車両損害とは異なり、比較的スムーズに保険金を手に入れることができるのです。
とはいえ、近年は損害保険協会が不正請求に厳しく対応しており、保険金目当ての不正請求はバレやすくなっています。また保険金詐欺は、最大10年の懲役刑が科せられることから、不正な請求は避けたいものです。
車両火災の損害で保険を使った場合、翌年の更新時に1等級ダウンして事故有り係数1年が適用されるため、前年よりも保険料は割高となります。
そのため、車両保険を利用する際は、翌年以降の保険料と損害額を比較した上で、保険の利用を検討しましょう。
2006年の少々古い資料となりますが、日野自動車が「車両火災発生時の対応」として7つの対処方法を紹介しています。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
最も危険なのは、走行中の火災です。坂道で停車しなければならないときは、障害物や道路の状況を確認した上で、安全な方へハンドルを切って停車しましょう。
ハンドルを切っておくと、火災によりブレーキが解除された場合も、暴走等の二次災害を防ぐことができます。
実際のところ火の勢いが強いときは、サイドブレーキを掛けていても解除されてしまうものです。しかし、サイドブレーキを掛けておかないと車が勝手に動き出すことがあるため、必ずサイドブレーキを掛けておきましょう。
エンジンを停止しないとガソリンや油圧系統に負荷が掛るため、大きな火災につながることがあります。①、②のあと、すぐにエンジンを停止しましょう。
電気系統の装置を作動したままにしておくと、ショートして火の勢いを助長することがあります。特に夜間帯に火災が発生した場合は、できるだけライトやハザードランプを切っておきましょう。
ブレーキ系統が損傷すると、車が動き出してしまうことがあります。タイヤがバーストする恐れもあるため、過熱していないタイヤがあり輪止めを車に積んでいる場合は、タイヤに輪止めをかっておくと被害を最小限に留めることが可能です。
火の勢いが強い場合、タイヤのホイールが外れるなどして、数メートル先に飛ぶことがあります。そのため、輪止めが可能であれば処置をしたあと、速やかにタイヤの付近から離れるようにしましょう。
車両火災に避難する場合、車の前方ではなく後方へ移動し、歩道側もしくはガードレールの外側まで避難してください。
また、すぐに保険会社へ連絡をする必要があるため、可能な限り車検証を持ち出しておくことをお勧めします。
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