自動車事故などの損害は、保険会社が提供する自動車保険だけではなく、共済組合が提供する自動車共済でも補償が可能です。自動車保険と比較した場合、どのような違いがあるのでしょうか。
そこで今回は、自動車共済について取り上げながら、自動車共済のメリット・デメリット、保険料の違いなど詳しく解説していきます。
自動車共済とは、共済組合が提供する任意保険(自動車保険)のことです。共済組合は、営利目的で運営されている団体ではなく、お互いが助け合うことを目的としています。
そのため、契約条件にもよりますが、一般的な自動車保険よりも共済の方が割安となることがあります。自動車保険料が高くなりやすい若年層の方は、敢えて自動車共済に加入するのも1つの方法です。
一言で共済組合といっても様々な団体が存在しますが、全労済のマイカー共済、家庭用自動車共済のJA共済連は、一般の方でも加入することができます。ただし、自動車保険に加入する際に、必ず組合に加入しなければなりません。
また、共済の場合は自動車保険とは異なり、教員・公務員など加入対象者が限定されているケースも存在します。たとえば、国家公務員共済は国家公務員限定の自動車保険、教員共済は教員限定の自動車保険を扱っているなど様々です。
加入する際は、念のため加入対象者を確認しておくようにしましょう。
ここでは、自動車保険と比較した際の、共済のメリット・ デメリットを3つずつピックアップし、詳しく見てみたいと思います。
自動車保険と自動車共済の主な違いを、以下の表にまとめました。
それぞれの項目について、詳しくみていくことにしましょう。
項目 | 自動車共済 | 自動車保険 |
---|---|---|
運営の目的 | 共済事業のため営利目的ではない | 営利目的 |
加入対象 | 共済に加入している方(組合員) |
不特定多数 |
保険商品の内容 | セット商品となっているケースが多く、割引の種類、選択肢が限定される | 種類が多く、契約内容を自由に変更することができる |
根拠法 | 全労済:消費生活共同組合法 JA共済:農林共同組合法 など |
保険業法 |
セーフティーネット | 共済組合によって異なる |
あり |
保険料 | 一般的な自動車保険よりも安い |
共済よりも高いケースが目立つ |
先に触れたとおり、自動車保険は営利目的で運営されていますが、自動車共済は非営利目的となっています。
自動車共済は、共済に加入している組合員を対象としています。共済の種類によって、組合員になることができないケースもありますが、たとえば全労済の場合は1,000円以上の出資金を支払うことで組合員になることが可能です。
一方、保険会社が扱っている自動車保険の場合、車を所有している18歳以上の方であれば、一定条件を満たすことで誰でも加入することができます。
補償範囲に関しては、自動車共済も自動車保険もほぼ同じです。
ただし、自動車共済の場合はパッケージ商品が主体となっているため、自動車保険のように補償内容を自由にカスタマイズすることができません。
自動車共済と自動車保険では、根拠となる法律が異なります。自動車共済の根拠法の一例は以下の通りです。
根拠法:消費生活協同組合法
根拠法:農林協同組合法
なお、自動車保険の場合は、保険業法を根拠法としています。
保険会社が経営破綻した場合、損害保険契約者保護機構が対応するため、契約者に何らかの影響が及ぶことはありません。一方、自動車共済の場合ですが、運営の母体となる共済によって対応が分かれます。
基本的に、共済組合が破綻した際は、別の共済が契約を引き受ける体制を取っていますが、規模が比較的小さな共済組合は、セーフティーネットが不十分なケースが少なくありません。
自動車保険の場合、保険会社が営業利益を上げる必要があるため、共済よりも割高となるケースがあります。
ただし、近年はダイレクト型自動車保険のように、保険料が安い保険会社が増えているため、必ず共済が安くなるとは限りません。
自動車保険と自動車共済を比較する際は、『補償内容』、『事故対応とロードサービス』、『割引サービス』の3つのポイントを抑えるようにしましょう。要点は以下の通りです。
補償内容に関しては、共済も自動車保険もほぼ同じです。大きく異なるのは『特約』だといえます。
たとえば全労済やJA共済の場合、共に弁護士費用保障特約は扱っていますが、自損事故傷害特約や自転車賠償責任補償特約は全労済しか扱っていません。
一方、自動車保険の場合ですが、保険会社ごとで様々な特約を扱っており、共済よりも補償を厚くすることができます。
そのため、自動車共済に加入する際は、補償内容だけではなく、補償の厚さや補償限度額も確認することが重要です。
たとえば全労済とJA共済の事故対応の場合、サービスの内容は一般的な自動車保険と大きく変わりはありません。
しかし、共済に加入している組合員の人数が、自動車保険に加入している方の人数よりも少ないこともあり、自動車保険の事故対応の体制・サービスの品質は、自動車保険の方が優れている傾向にあります。
一方、ロードサービスに関してですが、レッカー移動、故障トラブルの対応は共済でも扱っているものの、サービスの種類は多くありません。
自動車保険の場合、チューリッヒやソニー損保など、JAFと引けを取らないロードサービスを提供しているケースが目立つため、満足度で比較すると自動車保険に軍配が上がるといえそうです。
ただし、JAFに加入している方は、自動車共済のロードサービスの質にこだわる必要はありません。
自動車共済の場合、全労済とJA共済に限り、自動車保険と同等の割引サービスを提供しています。
ただし、割引サービスの種類はそれほど多くないため、適用されるサービス内容を確認しておくようにしましょう。
一方、自動車保険の場合ですが、保険会社ごとで様々な割引サービスを提供しています。
特にダイレクト型(通販型)の自動車保険は、提供している割引サービスが多い傾向にあるため、上手に活用することで保険料を抑えることができます。
割引サービスの有無や割引率だけを重視することはお勧めしませんが、共済と自動車保険の割引サービスを比較した上で、どちらかお得になるか確認しましょう。
自動車共済の掛け金は、自動車保険と比較すると割安だといわれていますが、実際のところ必ずしも安くなるとは限りません。
参考までに、今回は全労済とそんぽ24の見積もりツールを用いて、実際の保険料を算出してみました。40歳のケースと21歳のケースに分けてご紹介します。
被保険者の設定 | 年齢 | 40歳 |
---|---|---|
ノンフリート等級 | 6等級 |
|
運転者年齢条件 | 35歳以上補償 |
|
運転者範囲 | 運転者本人・配偶者限定 |
|
車 | スズキ スイフト(ZC83S) |
|
免許証カラー | ブルー(全労済は申告箇所なし) |
|
使用目的 | 日常生活・レジャー(全労済は申告箇所なし) |
|
年間走行距離区分 | 3,000km~5,000km(全労済は申告箇所なし) |
|
基本補償設定 | 対人賠償 | 無制限 |
対物賠償 | 無制限 |
|
人身傷害 | 5,000万円 |
|
搭乗者傷害 | 0円 |
|
車両保険 | なし |
上記の条件で掛け金・保険料を算出したところ、全労済のマイカー共済は『62,120円』、そんぽ24は『59,380円』となりました。
続いて、21歳の掛け金・保険料も算出してみることにしましょう。
被保険者の設定 | 年齢 | 21歳 |
---|---|---|
ノンフリート等級 | 6等級 |
|
運転者年齢条件 | 21歳以上補償 |
|
運転者範囲 | 運転者本人・配偶者限定 |
|
車 | スズキ スイフト(ZC83S) |
|
免許証カラー | ブルー(全労済は申告箇所なし) |
|
使用目的 | 日常生活・レジャー(全労済は申告箇所なし) |
|
年間走行距離区分 | 3,000km~5,000km(全労済は申告箇所なし) |
|
基本補償設定 | 対人賠償 | 無制限 |
対物賠償 | 無制限 |
|
人身傷害 | 5,000万円 |
|
搭乗者傷害 | 0円 |
|
車両保険 | なし |
全労済は『98,860円』、そんぽ24は『105,640円』となりました。検証の結果、年齢が若い場合は、自動車共済の方がやや安くなる可能性が高いといえそうです。
ただし、見積もり条件によって保険料は変動するため、上記の検証結果がすべてではありません。
また、今回は保険料が安いダイレクト型自動車保険(そんぽ24)と比較したため、代理店型の自動車保険と比較する場合は、自動車共済の方が割安となる可能性があります。
以上のことから、自動車保険と自動車共済のどちらが安いかは、見積もり条件や比較する自動車保険によって異なるといえそうです。
共済から自動車保険に乗り換える際、一番注意したいのは等級の引継ぎです。自動車保険ではノンフリート等級制度を導入しており、保険会社が提供している自動車保険同士であれば等級の引継ぎが可能となっています。
しかし共済の場合、共済から自動車保険、もしくは自動車保険から共済への等級の引継ぎができないことがあるのです。
全労済やJA共済、教職員共済等、一部では等級の引継ぎが可能なケースもありますが、自動車保険ごとで対応は異なります。
共済から自動車保険へ等級を引継げない場合、今までの等級がリセットされてしまうため注意しましょう。
自動車共済は、補償の充実度にこだわらない単身者、新社会人、大学生、コストをできるだけ抑えたい方にお勧めです。
家族で自動車共済に加入し、掛け金を抑えることも可能ですが、ライフスタイルや車の使用頻度によって細かく補償内容を変えたい方は、自動車保険の方が適しています。
共済や自動車保険の評判を参考にしたり、自動車保険や共済のランキングをチェックしながら、適した補償を受けることができるように備えておきましょう。
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