自動車保険は、等級によって保険料が変動することは広く知られています。しかし、等級制度の内容は初心者にとって分かりづらく、難しい用語が出てくると混乱するケースが少なくありません。
そこで今回は、等級制度の仕組みについて取り上げながら、自動車事故における保険事故の種類、事故有係数適用期間の概要、事故ありとなった際の等級の継続期間など、詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
等級制の仕組みは、損害保険料率算出機構が制定した『ノンフリート等級制度』によって決められています。ノンフリート等級制度とは、ノンフリート契約において保険料を算出する際に用いている仕組みのことです。
使用・所有している車の台数が9台以下の自動車契約のことを、ノンフリート契約と呼んでいることから、ノンフリート等級制度と名付けられました。
ようするに、ノンフリート等級制度とは、自動車保険の保険料を決めるためのルールの1つということです。
2012年4月にノンフリート等級制度が改定され、ほとんどの自動車保険契約が改定後のノンフリート等級制度に切り替わりました。
改定前までは『事故の内容、保険請求回数』で等級が決められていましたが、改定後は『事故歴、事故内容、保険請求の有無』によって等級が決まるようになったのです。
事故あり・事故なしで保険料の割増引率が大幅に変わるため、事故リスクが低い人ほど保険料は安くなります。
等級は1等級から20等級に分かれており、最も割増率が高いのは1等級、逆に最も割引率が高いのは20等級です。
新規加入時は6等級から始まりますが、無事故で1年間過ごし、1度も自動車保険を利用しなかった場合は、翌年に1つ等級が上がります。
自動車保険の保険事故とは、事故発生時に自動車保険を使って補償を受けたケースのことを指しています。
そのため、事故を起こしてしまったものの、自動車保険を使わなかった場合は保険事故となりません。
前項で触れたノンフリート等級制度では、以下の3つの事故を保険事故として定めています。
なお、ノンフリート等級制度が改定される前は、等級すえおき事故と呼ばれる事故が設けられていましたが、改定後は廃止されて1等級ダウン事故が加えられました。
概要を以下にまとめましたので、参考にしてください。
自動車保険を使って補償を受けた際、翌年3等級ダウンする事故のことを指します。基本的に、1等級ダウン事故、ノーカウント事故に該当しない事故、もしくは相手がある事故の多くは3等級ダウン事故となるケースがほとんどです。
・相手の車に追突し対物賠償保険金が支払われた事故
・相手に怪我をさせてしまい対人賠償保険金が支払われた事故
・車同士の事故で車両保険金が支払われた事故
・自宅の壁などに車をぶつけて車両保険金が支払われた事故
※1等級ダウン事故以外で車両保険金が支払われた事故も該当する
自動車保険を使って補償を受けた際、翌年1等級ダウンする事故のことを指します。
・火災、爆発による損害で車両保険が支払われた事故
・台風、竜巻、洪水、高潮による損害で車両保険が支払われた事故
・落書き、いたずらによる損害で車両保険が支払われた事故
・盗難により車両保険が支払われた事故
・飛来物、落下物との衝突で車両保険が支払われた事故
※身の回り品補償特約、車内携行品補償特約など、車の中やキャリアに固定した物が破損した際に補償を受けた場合も含まれます。
保険金の支払いはあるものの、等級はダウンしない事故です
・個人賠償責任特約が適用された事故
・無保険車傷害保険が適用された事故
・ファミリーバイク特約が適用された事故
・弁護士費用特約のみが適用された事故
・記名被保険者(主に車を運転する人)、またはその家族が自動車事故で怪我をして、人身傷害保険金・搭乗者傷害保険金が支払われた事故
事故有係数適用期間は、『じこありけいすうてきようきかん』と読みます。事故有係数の読み方がよく分からないという方が目立ちますが、難しく考えることはありません。
ようするに、事故を起こして自動車保険を使った場合に、ペナルティー(低い割引率)が適用される期間のことを指します。
事故有係数は、ノンフリート等級制度が改定された際、新たに導入された仕組みです。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
⑤、⑥に関してはこのあと詳しく解説しますが、3等級ダウン事故・1等級ダウン事故を起こした後、1年間事故を起こさなかった場合は、翌年の等級が1つ上がり事故有係数適用期間が1年減少します。
つまり、等級・事故有係数適用期間は、無事故の状態が続けば、いずれ事故前の状態に戻るのです。
ノンフリート等級制度が改定される前は、前契約の事故の有無に関係なくすべて同じ割増引率が適用されていました。
つまり、10等級から7等級にダウンした方と、6等級から7等級に上がった方は、同じ割増引率だったのです。
しかし、このような状況は保険料負担の公平さに欠けるとして、改定後のノンフリート等級制度を導入する損保会社が急増しました。
保険料負担の公平さに欠けると判断された理由は、主2つあります。1つは、1度事故を起こした方の事故再発リスクは、無事故の方よりも高い調査結果が報告されていたこと。
もう1つは、事故ありの方の保険金の一部を、事故なしの方の保険料で補っていたことです。
また、60歳以上の事故率は若年層と同様に高くなっており、近年の高齢化によって保険金が支払われる事故が増えていることも関係しています。
以上のことから、事故有係数を用いて保険料を公平に算出し、事故リスクが低い方ほど保険料が安くなる仕組みが導入されるようになったのです。
等級と事故有係数は、損保会社の間で情報共有されています。そのため、他の損保会社へ乗り換えたとしても、そのまま引継がれてしまうのです。
事故有係数を引継ぎたくないことを理由に虚偽の申告をした場合、補償時に保険金が支払われなかったり、強制解約となるため注意しましょう。
なお、JA共済や全労済などの共済でも、損保保険と同様に事故有係数の制度が採用されています。
ただし、事故有係数適用期間に関しては、損保会社の扱いと異なるケースがあるため、事前に確認をしましょう。
事故有係数を引継ぎたくない場合、重要となるポイントは1つです。以下に要点をまとめましたので、こちらを参考にしてください。
任意保険は、解約をしてから13カ月が経過すると、前契約時の等級や事故有係数はリセットされます。そのため、6等級・事故有係数0年で新規契約をすることが可能です。
事故有係数を翌年の契約時に引継ぎたくない場合は、一旦任意保険を解約することを検討しましょう。また、手続き方法や詳細に関しては、加入している損保会社によって異なるため事前に確認してください。
ちなみに、等級と事故有係数は、任意保険の満期日・解約日の翌日から7日以内に新たな契約を行うとそのまま引継がれるものです。そのためか、8日以降に再契約をすれば引継ぎされないと勘違いされるケースが目立ちます。
低い等級や事故有係数を簡単にリセットすることが出来てしまうと、事故を起こした方が任意保険をすぐに解約するといった事態になりかねません。
保険料の公平さに欠けてしまうだけではなく、損保会社は事故リスクを正しく判断することができなくなってしまいます。
以上のことから、事故有係数を次回の契約時に引継ぎたくないときは、必ず13カ月空けることを抑えておきましょう。
事故ありの等級が継続される期間は、図を用いて確認することで非常に分かりやすくなります。
等級が事故前の状況に戻るタイミングや、事故有係数適用期間がいつから始まり、いつ終わるのかを確認したいときは、以下の方法を参考にしてください。
(出典:保険スクエアbang)
3等級ダウン事故の場合、翌年度から3年間に亘って事故有等級が適用されます。たとえば、18等級、事故有係数適用期間0年で3ダウン事故を起こしたとしましょう。
等級、事故有係数適用期間、割引率は以下の通りとなります。
事故発生年:等級・事故有係数適用期間・割引率はそのまま
1年後: 15等級・事故有係数適用期間3年・割引率33%割引
2年後:無事故で翌年を迎えた場合、16等級・事故有係数適用期間2年・割引率36%割引3年後:無事故で翌年を迎えた場合、17等級・事故有係数適用期間1年・割引率38%割引
4年後:無事故で翌年を迎えた場合、18等級・事故有係数適用期間3年・割引率54%割引
以上のことから、事故を起こす前の等級、事故有係数適用期間、割引率に戻るまでには4年間掛ることが分かります。
(出典:ソニー損保)
1等級事故が 発生した年 |
1年後 | 2年後 | |
---|---|---|---|
無事故割増引率適用 | 51%割引 |
-
|
51%割引 |
事故有 割増引率適用 | - |
31%割引 |
- |
事故有係数適用期間 | -
|
1年 |
- |
等級 | 15等級 |
14等級 |
15等級 |
1等級ダウン事故の場合、翌年度から1年間のみ事故有等級が適用されます。たとえば、15等級(割引率51%)、事故有係数適用期間0年で1ダウン事故を起こしたとしましょう。
等級、事故有係数適用期間、割引率は以下の通りとなります。
事故発生年:等級・事故有係数適用期間・割引率はそのまま
1年後: 14等級・事故有係数適用期間1年・割引率31%割引
2年後:無事故で翌年を迎えた場合、15等級・事故有係数適用期間0年・割引率51%割引
以上のことから、事故を起こす前の等級、事故有係数適用期間、割引率に戻るまでには2年間掛ることが分かります。
(出典:保険スクエアbang)
2年連続で3等級ダウン事故を起こした場合、2年続けて3等級下がることになります。18等級、事故有係数適用期間0年で事故を起こした場合を想定し、詳細を以下にまとめました。まずはこちらをご覧ください。
事故発生年:等級・事故有係数適用期間・割引率はそのまま
1度目の事故発生年: 15等級・事故有係数適用期間3年・割引率33%割引
2度目の事故発生年: 12等級・事故有係数適用期間5年・割引率27%割引
3年後:無事故で翌年を迎えた場合、13等級・事故有係数適用期間4年・割引率29%割引
4年後:無事故で翌年を迎えた場合、14等級・事故有係数適用期間3年・割引率31%割引
5年後:無事故で翌年を迎えた場合、15等級・事故有係数適用期間2年・割引率33%割引
6年後:無事故で翌年を迎えた場合、16等級・事故有係数適用期間1年・割引率36%割引
7年後:無事故で翌年を迎えた場合、17等級・事故有係数適用期間0年・割引率53%割引
※経過年数は、1回目の事故発生のタイミングからカウントしているため、2回目の事故の翌年は3年後としています。
少々分かりづらいのは、等級と事故有係数適用期間が、事故前の状態に戻るタイミングです。
上記の通り、等級は8年、事故有係数適用期間は7年掛ります。つまり、7年後は無事故の割増引率が適用されるため、割引率が高くなるのです。
これまで解説した3つのパターンは、1年の短期契約を想定してシミュレーションした結果です。長期契約の場合はどうなるのかというと、事故有係数の適用期間の意味やカウント方法、考え方などはほぼ同じと考えていて間違いありません。
ただし、損保会社が提供している保険商品によって、事故のカウント方法・事故有係数適用期間のカウント方法が長期契約のみ別になっていることがあります。
そのため、長期の契約で任意保険に加入している方は、正しいカウント方法を損保会社へ確認してください。
改定されたノンフリート等級制度を採用している損保会社は、事故有・無事故の保険料を算出する際、以下の表のデータを用いているケースが目立ちます。まずは、以下の表をご覧ください。
等級 | 無事故の割増引率 | 有事故の割増引率 |
---|---|---|
1等級 | 64%割増 |
|
2等級 | 28%割増 |
|
3等級 | 12%割増 |
|
4等級 | 2%割引 |
|
5等級 | 13%割引 |
|
6等級 | 19%割引 |
|
7等級 | 30%割引 |
20%割引 |
8等級 | 40%割引 |
21%割引 |
9等級 | 43%割引 |
22%割引 |
10等級 | 45%割引 |
23%割引 |
11等級 | 47%割引 |
25%割引 |
12等級 | 48%割引 |
27%割引 |
13等級 | 49%割引 |
29%割引 |
14等級 | 50%割引 |
31%割引 |
15等級 | 51%割引 |
33%割引 |
16等級 | 52%割引 |
36%割引 |
17等級 | 53%割引 |
38%割引 |
18等級 | 54%割引 |
40%割引 |
19等級 | 55%割引 |
42%割引 |
20等級 | 63%割引 |
44%割引 |
上記の表を基に、重要なポイントを3つピックアップしました。
上図のとおり、1等級から6等級までは同じ割増引率となります。なお、5等級以下となった場合、翌年の契約を断れるケースがあるため注意しましょう。
4等級から20等級までは等級応じて割引されますが、1等級から3等級までは割増となります。そのため、1等級から3等級までは保険料が割高となってしまうのです。
まずは以下の表をご覧ください。
等級 | 無事故の割増引率 | 有事故の割増引率 |
---|---|---|
7等級 | 30%割引 |
20%割引 |
8等級 | 40%割引 |
21%割引 |
9等級 | 43%割引 |
22%割引 |
10等級 | 45%割引 |
23%割引 |
11等級 | 47%割引 |
25%割引 |
12等級 | 48%割引 |
27%割引 |
13等級 | 49%割引 |
29%割引 |
14等級 | 50%割引 |
31%割引 |
15等級 | 51%割引 |
33%割引 |
16等級 | 52%割引 |
36%割引 |
17等級 | 53%割引 |
38%割引 |
18等級 | 54%割引 |
40%割引 |
19等級 | 55%割引 |
42%割引 |
20等級 | 63%割引 |
44%割引 |
事故有、無事故に分かれるのは7等級からとなるため、上記の図では7等級から20等級の割増引率をまとめました。
先述したとおり、ノンフリート等級制度は事故リスクが低い方ほど保険料が安くなる仕組みとなっています。そのため、等級が高かったとしても、保険事故を起こした際は一気に割増引率が下がってしまうのです。
たとえば、18等級の際に3等級ダウン事故を起こしたとしましょう。翌年は15等級となり、事故有の割増引率が適用されるため、33%割引となります。18等級の事故なしの割増引率と比較すると、21%も下がることが分かります。
また、1等級ダウン事故だったとしても16%下がることになるため、翌年の保険料が一気に上がる仕組みとなっているのです。
ようするに、保険事故を起こした際は、等級に関係なく公平に保険料を負担することになります。
私は年間で57,230円の保険料を支払っていましたが、保険スクエアbang!という一括見積もりサイトを利用して、保険料を20,630円まで安くすることに成功しました。
保険スクエアbang!は、見積もり結果がブラウザ上に表示されるので、すぐに保険料を知りたい方にはかなり便利なサービスだと思います。
ちなみに、難しいことは一切していません。3分くらいで出来てしまいました。見積もりサービスと聞くと、資料が大量に送られてくるんじゃないの?電話などの勧誘やセールスがくるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そんなことは一切ありませんでした。