交通事故による自賠責保険の慰謝料は、3つの基準から成り立っています。それぞれの基準毎で慰謝料は大きく変わってくるため、基本的な概要を事前に押さえておくことが非常に重要です。
そこで今回は、自賠責保険の慰謝料について取り上げながら、慰謝料の概要、自賠責保険の慰謝料計算方法、損害賠償と慰謝料の違いなど、詳しく解説していきます。
自賠責保険の場合、慰謝料は「被害者の状況」によって異なってきます。この項では、慰謝料の概要、慰謝料相場について詳しく見ていくことにしましょう。
そもそも慰謝料とは、事故が原因で被害者が負った「精神的苦痛」に対する損害賠償金のことです。被害者が加害者に対して請求することができます。
ケガで治療費が必要となった場合は分かりやすいですが、精神的苦痛は他人に分かりづらいものです。そのため、慰謝料の請求額は被害者が任意で決定できる仕組みとなっています。
一般的には、治療期間、通院期間、症状、生死などによって損害賠償額は決定されます。一つ注意したいのは、損害賠償額の金額です。交通事故による慰謝料請求は、おおよそ金額が決まっているものです。
大きく分けると、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」があります。次項では、まず自賠責保険の慰謝料相場について詳しくみていくことにしましょう。
自賠責保険で定められた慰謝料の金額は、1日あたり4,200円です。最終的には、対象となる日数を合計した金額が慰謝料となります。なお、あくまでも一例となりますが、自賠責保険の損害賠償額の相場は以下のとおりです。
今回は、平成24年度の相場を表にまとめました。
車種 | 死亡事故 | 損害および後遺障害 |
---|---|---|
平均相場 | 平均相場 | |
乗用自動車 | 843万円 |
13.9万円 |
営業用乗用車 | 251万円 |
21.6万円 |
軽四輪自動車 | 848万円 |
13.4万円 |
自家用貨物車 | 837万円 |
21.1万円 |
営業用貨物車 | 104万円 |
17.7万円 |
バス | 910万円 |
10.5万円 |
二輪車 | 415万円 |
21.9万円 |
原付自転車 | 340万円 |
19.1万円 |
ダンプカー | 929万円 |
23.8万円 |
特殊用途自動車 | 1,001万円 |
19.9万円 |
工作車 | 800万円 |
53.1万円 |
レンタカー | 930万円 |
24.6万円 |
平均 | 714万円 |
14.9万円 |
上記はあくまでも目安となるものですが、交通事故に遭遇した場合の慰謝料の相場は、おおよそ上記の金額が相場となると覚えておいてください。平均14.9万円が高いか安いかは何とも言えないところですが、一般的な自動車事故であれば10万円以上は確実に慰謝料が支払われるといえそうです。
自賠責保険の慰謝料の場合、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3つに分かれることは先に述べたとおりです。この項では、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」について取り上げながら詳しく見ていくことにします。
ちなみに、精神的損害賠償の場合、年齢や職業などによって賠償額が変わることはほぼないと考えていた方が無難です。
入通院慰謝料とは、交通事故が原因で入通院が必要となった場合、入通院に伴って被害者が精神的な損害を負ったことに対し賠償するためのものです。交通事故でケガをした際は、リハビリや治療で精神的苦痛を伴うケースが多いことから、その損害をカバーしてもらえるといっても良いかもしれません。
入通院慰謝料は、入通院の期間やケガをした部位、ケガの状況などによって異なります。金額の上限は1日4,200円です。以下の2つのうち、金額が低い方が採用されます。完結に、自賠責保険の計算方法についてまとめると以下の通りです。
たとえば、12月1日に事故に遭って、12月15日まで通院したとしましょう。治療期間は15日間、実際に治療をした日数は12日間と仮定します。この場合は以下のとおりです。
以上のことから、期間が少ない①が採用されて、4,200円をかけた63,000円が慰謝料となるのです。ようするに、治療した日数が長い方が慰謝料は増えます。
ちなみに、自賠責保険の場合は、慰謝料以外にも休業損害や治療費も含まれます。上限である120万円を超えたときは、任意保険から支払われることになりますが、自賠責保険とは基準が異なるものです。
場合によっては減額となるケースもあるため、まずは通院日数や治療期間を自分で判断し、算出することがポイントとなります。
後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害が残ったことで精神的な損害を負った場合に賠償される慰謝料のことです。後遺障害慰謝料は14等級に分かれており、「後遺障害別等級表」と呼ばれる表を使って算定されることが通例となります。
つまり等級数ごとによって、支払われる慰謝料は大きく変わってくるということです。たとえば14等級の場合、自賠責保険基準の後遺障害慰謝料は32万円。裁判所基準額は110万円となっています。
後遺障害慰謝料は認定を得ることが重要ポイントとなるため、等級の取り方、症状別の等級の違いについて把握しておくことがとても大切です。
損害賠償と慰謝料は区別がつきにくいものですが、正確に言うと意味合いは少しだけ違います。慰謝料は損害賠償の中に含まれている一部分のことです。ようするに、損害賠償の中に慰謝料が含まれているといったイメージとなります。
交通事故の場合、損害賠償と慰謝料というキーワードは頻繁に登場しますが、両者の金額は大きく変わってきますので誤解しないように気をつけましょう。
最後の項では、慰謝料の計算に導入されている3つの基準について詳しく見ていくことにしましょう。交通事故の慰謝料は、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つです。概要を以下にまとめましたので、参考にしてください。
簡単にいうと、自賠責保険をもとにした基準のことを指します。自賠責保険の場合、法律上、強制加入となっており、自動車を所有している方は加入が義務付けられているものです。
そのため、人身事故に対して最低限の保障がなされます。ただし、あくまでも最低限となるため、算出基準はとても低いのが難点です。
自らが加害者となり損害賠償金を支払うことになった場合や、逆に被害者となった場合、自賠責保険のみでカバーすることは困難なことが多々あります。
ちなみに、自賠責基準と弁護士基準の後遺障害の慰謝料を比較した場合、最大1,000万円以上差が開くことが珍しくありません。参考までに、自賠責保険の等級別の慰謝料を以下の表にまとめました。
後遺障害等級 | 保険金額 | うち慰謝料 |
---|---|---|
第1級 | 3,000万円 |
1,100万円 |
第2級 | 2,590万円 |
958万円 |
第3級 | 2,219万円 |
829万円 |
第4級 | 1,889万円 |
712万円 |
第5級 | 1,574万円 |
599万円 |
第6級 | 1,296万円 |
498万円 |
第7級 | 1,051万円 |
409万円 |
第8級 | 819万円 |
324万円 |
第9級 | 616万円 |
245万円 |
第10級 | 461万円 |
187万円 |
第11級 | 331万円 |
135万円 |
第12級 | 224万円 |
93万円 |
第13級 | 139万円 |
57万円 |
第14級 | 75万円 |
32万円 |
上記のとおり、等級が低くなるにつれて慰謝料の金額が下がっていくことが分かります。基本的に、自賠責保険基準で算出された慰謝料には、多くを期待しない方が良いといえそうです。
自動車保険における任意保険は、自賠責保険でカバーできなかった部分を補うための保険といった位置付けとなっています。自賠責保険の場合、対人賠償のみが補償範囲となりますが、任意保険は対人賠償だけではなく、対物などの補償もカバーすることが可能です。
自賠責保険基準以上の慰謝料が貰えることもありますが、弁護士基準を超えることはほぼありません。基本的に、保険会社ごとで慰謝料に対する基準は異なるほか、その基準は非公開となっていることから、事前に判断しづらい点がネックです。
保険会社の都合に合わせて慰謝料が減額されることもあるため、弁護士に相談した上で交渉を重ねた方が慰謝料の増額につながります。
弁護士基準は、もっとも高額な慰謝料が期待できる基準です。自賠責保険基準や任意保険基準と大きく異なる点は、公平で客観的な過去の判例を基に慰謝料が決まる点にあります。
そのため、今回ご紹介した3つの基準の中で、一番慰謝料の基準額が高いのです。ちなみに、裁判基準として採用されているのは、「赤本(赤い本)」や「青本」といった日弁連交通事故相談センター発行の書籍となります。
これらの書籍には、傷害事故による慰謝料を算出する際に用いる表などが掲載されていて、入院した月と通院した月から簡単に算出することが可能です。
交通事故の慰謝料を基準とした場合、増額される可能性が高まるため、より適正な金額の慰謝料を受け取ることができるようになります。
特に自賠責基準で金額が低い14等級などは、保険会社が等級認定を承諾しない動きを取るケースが散見されるため、そのようなときに弁護士基準を用いると、適切な慰謝料が支払われることにつながりやすいのです。
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