無保険車傷害特約(保険)とは、契約車両を運転または乗車中に無保険車と事故を起こし、死亡もしくは後遺障害を負った場合、補償される保険です。
無保険車傷害保険は、ほとんどの自動車保険に自動付帯されているため、契約時に自ら選択して加入する必要はありません。ただし、念のため加入有無を確認しておくことをお勧めします。
今回は無保険者傷害保険について取り上げながら、無保険車の意味、補償範囲と補償金額、補償対象外となるケースなど詳しく解説していきます。
そもそも、自動車保険における無保険車との事故とは、どのような相手との事故を指すのでしょうか。
自動車保険における無保険の車とは、以下の4項目のいずれかに該当するケースのことを指しています。
上記4つの中で、②と③が少々分かりづらいため補足します。まず②ですが、契約状況が不適切とは、運転者年齢条件特約・運転者限定特約が正しく設定されていない状況のことです。
運転者年齢条件特約は、保険会社によって若干区分は異なりますが、おおよそ3区分もしくは4区分に分かれています。
一般的には、年齢を問わず補償、21歳以上補償、26歳以上補償、30歳以上補償(35歳以上補償の場合もあり)となっているケースが大半です。一方、運転者限定特約は、本人限定、夫婦限定、家族限定3タイプが主流となっています。
たとえば、本人限定となっている場合、年齢条件に関係なく本人以外の方が運転中に事故を起こすと無保険車となるのです。そのため、対人賠償保険に加入していても補償されません。
上記以外にも、運転者年齢条件特約・運転者限定特約が正しく設定されていなかったことが原因で、対人賠償保険を使うことができず、賠償責任を果たすことができないケースがあります。
次に③についてですが、対人賠償保険の場合、自動的に無制限となっている場合と、上限金額をいくつかのパターンの中から選択できる場合があります。
そのため、事故の相手が対人賠償保険の上限額を低く設定していると、事故の内容によっては保険金額が賠償金よりも少なく、十分な補償を受けることができないケースがあるのです。
無保険者傷害保険の補償範囲、補償金額について詳しくみていくことにしましょう。
要点を以下にまとめましたので、ご確認ください。
無保険車との事故で死亡・後遺障害を負った場合に補償されます。完治する怪我や傷害は、補償対象ではありません。
そのためケガの場合には相手の自賠責保険で最高120万円までは保証されますが、それ以上は補償されないということになります。
また、入院で仕事が出来ない間の休業補償などの損害も、無保険者傷害保険では補償されません。
無保険車傷害保険の対象者は、以下のとおりです。
一般的に、無保険車傷害保険の補償金額の上限は、自らが契約している対人賠償保険の設定額の範囲内となります。
ただし、対人賠償保険の設定額が無制限となっている方は、2億円までとなるケースがほとんどです。
保険会社によって、無保険車傷害保険の金額は若干異なるため、公式WEBサイトなどから確認をしておきましょう。
参考までに、今回は5社の補償金額を表にまとめました。
アクサダイレクト | 補償金額の上限:2億円まで(契約時自動セット) |
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イーデザイン損保 | 補償金額の上限:2億円まで(契約時自動セット) |
SBI損保 | 補償金額の上限:2億円まで(契約時自動セット) |
セゾン自動車火災保険 | 補償金額の上限:無制限(契約時自動セット) |
チューリッヒ | 補償金額の上限:2億円まで(契約時自動セット) |
無保険車傷害保険はひき逃げや当て逃げ等、事故の相手を特定することができない場合も補償対象です。ただし、抑えておきたいポイントが1つあります。
国土交通省では自動車損害賠償補償法に基づいて、損害を補償するための政府保障事業制度を設けています。
上記のように、相手を特定することができない事故に遭遇した場合、自賠責保険の基準に沿って補償を受けることができるのです。
そのため、政府保障事業制度の賠償が優先される仕組みとなっており、万が一不足が生じたときのみ無保険車傷害保険が支払われます。
政府保障事業制度の補償額ですが、傷害事故が120万円まで。後遺障害を負った事故は、傷害の程度に応じて75万円から3,000万円まで。死亡事故は3,000万円までです。
なお、後遺障害を負った事故については、常時介護が必要となる場合のみ4,000万円まで補償を受けることができます。
請求することができるのは被害者のみとなっており、加害者が請求することはできません。また、健康保険や労災保険などの社会保険からも給付を受ける場合は、その金額を差し引いた補償額が支払われます。
調査業務は損害保険料率算出機構が担当していますが、請求先は損害保険会社となるため、損害保険会社の窓口で手続きを行ってください。
ちなみに、必要書類が多岐に亘ることから、事前に請求窓口へ問い合わせておいた方が無難です。
以下のケースに該当する場合、無保険車傷害保険の補償対象外となります。保険会社によって若干内容は異なるため、事前に確認してください。
など
人身傷害補償保険とは、契約車両に搭乗していた方が事故に遭い死傷した場合、過失割合に関係なく実損額を補償してもらうことができる保険です。
無保険車傷害保険と人身傷害保険は、死亡・後遺障害を負った際に補償される点で補償内容が重複しています。
補償内容が重複している場合、両方から補償を受けることができるケースもありますが、無保険車傷害保険と人身傷害補償保険の場合、両方から補償を受けることはできません。
そもそも、無保険者傷害保険は、加害者が本来負担する損害賠償金を、保険会社が支払う形式となっています。
厳密にいうと、自賠責保険・人身傷害保険の上限額を超えた部分に対し、無保険者傷害保険金が支払われるのです。
そのため、保険金が支払われる優先順位は、人身傷害補償保険の方が先となっています。無保険車傷害保険は、あくまでも補助的な位置付けなのです。
これまで解説してきたとおり、自賠責保険、人身傷害補償保険、政府保障事業制度など、無保険車傷害保険よりも優先的に補償される保険や制度があるため、無保険車傷害特約(保険)は必要かどうか迷うものです。
しかし無保険車傷害保険は、なくてはならない保険の1つといえます。主な理由を2つ取り上げましたので、参考にしてください。
死亡・後遺障害を負う事故は、損害賠償額が数千万円から1億円を超えることも珍しくありません。そのため、万が一の事態に備えて、無保険者傷害保険に加入しておく必要があります。なぜなら、以下の2つのケースが想定されるからです。
1つは、相手が自動車保険未加入だった場合。もう1つは、自動車保険に加入しているものの、保険金が賠償額に満たない場合です。
まず1つ目ですが、相手が自動車保険未加入だったときは、自賠責保険から補償を受けることになります。死亡事故は3,000万円まで、後遺障害は4,000万円までとなるため、高額な賠償金となった場合は、十分な賠償金を受け取ることができません。
2つ目に関しては、まず先に自賠責保険から賠償金を受け取り、不足分は相手の対人賠償保険から補償を受けることになります。しかし、それでも十分だった場合は、人身傷害補償保険や無保険者傷害保険で対応するしかありません。
人身傷害補償保険に加入していない方は、無保険者傷害保険で補償を受けることになるため、最悪の事態に備えて加入しておいた方が安心できるのです。
自賠責保険は強制保険となっており、法律で加入が義務付けられています。
しかし、自動車保険は任意であるため、車を所有しているすべての方が加入しているわけではありません。ここで1つ表をご覧ください。
年度 | 対人賠償保険の加入率 |
---|---|
2006年 | 71.5% |
2007年 | 72.1% |
2008年 | 72.7% |
2009年 | 73.1% |
2010年 | 73.4% |
2011年 | 73.1% |
2012年 | 73.3% |
2013年 | 73.4% |
2014年 | 73.8% |
2015年 | 74.1% |
損害保険料率算出機構『自動車保険の概況』より引用
上記の表は、損害保険料率算出機構が行った調査結果となります。損害保険料率算出機構とは、料率算出団体のことです。保険会社が保険料を算出する際に用いる、保険料率の基礎となる情報を提供するなど様々な業務を行っています。
今回は、対人賠償保険の加入率をピックアップしました。上記の図は全国平均値です。2006年度から2015年度までの値を辿っていくと、たった3%程度しか増加していないことが分かります。
対人賠償保険に加入していない方は、2015年度で25.9%となりますが、共済保険は含まれていません。そのため、実際のところ約15%程度の方が任意の対人賠償保険未加入といわれています。
極端なお話となりますが、10回交通事故を起こした場合、そのうち1回から2回は無保険車である可能性が高いということです。
これまで解説してきたとおり、実際に無保険車傷害保険を使って補償を受けるケースはそれほど多くはありません。
また、無保険車傷害保険は、自動車保険契約時に自動付帯されているケースが多いため、加入していることに気付かない方がほとんどです。
とはいえ、これだけ対人賠償保険未加入の方が存在することを考えると、無保険車傷害保険は必要な保険だといえます。
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