人身傷害補償保険は、2000年前後から発売された保険商品で、搭乗者傷害保険よりも補償内容が厚いため、代理店型の自動車保険では必須加入、ダイレクト型の自動車保険の場合は任意となっているケースがほとんどです。
このページでは、人身傷害補償保険の概要について取り上げながら、搭乗者傷害保険との違い、最適な設定金額、保険料を節約するコツなど、詳しく解説していくことにしましょう。
人身傷害補償保険とは、自分や自分の家族、契約車両に搭乗していた方が交通事故に遭った際、補償して貰うことができる保険です。死傷・後遺障害を負った場合に、過失割合に関係なく損害分を補償して貰うことができます。
なお、記名被保険者とその家族に関しては、契約車両だけではなく、他の車に搭乗中、歩行中に自動車事故で死傷・後遺障害を負った場合も補償されます。保険金額は、契約時に設定した範囲内で損害状況に応じて支払われます。
示談交渉を待つことなく保険金を受け取ることができるため、自分の身を守る保険として重要な役割を果たしています。
保険会社によって、人身傷害補償特約と呼んでいることもありますが、人身傷害補償保険と内容は同じです。
このあと詳しく述べますが、人身傷害保険特約・保険は慰謝料だけではなく、治療費、死亡保険金、休業補償、入通院費等も補償されます。
ちなみに、相手が自動車保険に加入していない場合、もしくは加入していても十分な補償を受けることができない場合は、人身傷害補償保険から不足分が支払われます。
そういった意味でも、人身傷害補償保険は重要な保険だといえそうです。
人身傷害補償保険は、搭乗者傷害保険の補償内容と重複している箇所がいくつかあります。とはいえ、何点か違いがありますので、要点を以下にまとめました。
人身傷害補償保険は、契約時に設定した上限額の範囲内で、実際の損害に応じて保険金が支払われます。一方、搭乗者傷害保険は、契約時に設定した定額が支払われます。
人身傷害補償保険は、記名被保険者とその家族に限り、他社に搭乗していた際の事故、歩行中の事故も補償されます。一方、搭乗者傷害保険は、契約車両での事故のみ補償対象です。
搭乗者傷害保険の場合、症状や部位ごと、入通院日数に応じて保険金額が決まっているため、保険金が支払われるまでのスピードが早いといわれています。
一方、人身傷害補償保険は、総損害額が確定するまでに少々日数が掛るため、保険金を受け取るまでにやや時間がかかります。
ただし、示談交渉や裁判の結審が終わる前に保険金が支払われるため、対人・対物賠償保険よりも早く保険金を受け取ることができます。
人身傷害補償保険は、慰謝料、治療費、薬代、通院交通費、休業補償も対象となっています。一方、搭乗者傷害保険は、死亡保険金、後遺障害保険金、部位症状別払い、入通院日数払いのみです。
特に注目したいのは、死亡保険金と後遺障害保険金です。人身傷害補償保険は、契約時に自ら保険金額を設定し、実損分が補償されます。
一方、搭乗者傷害保険の場合、元々金額が決まっているため、損害賠償額が高額になると十分な補償を受けることができないケースがあるのです。
人身傷害補償保険の補償対象者、補償範囲、補償内容について詳しく見ていくことにします。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
・契約車両の記名被保険者
・記名被保険者の配偶者
・記名被保険者もしくはその配偶者の同居の親族
・記名被保険者もしくはその配偶者の別居の未婚の子
・被保険自動車に搭乗していた方
・被保険自動車の所有者もしくは運転者
・原則、自動車起因の交通事故で死傷、後遺障害を負った場合
・電柱へ衝突、崖から転落するなどの自損事故
・歩行中、他車両に乗車中、運転中の交通事故で死傷、後遺障害を負った場合(記名被保険者とその親族限定)
※人身傷害保険は、『車内のみ補償』、『車内・車外ともに補償』に分かれていることがあります。車内のみ補償を選択している場合、補償範囲は搭乗者傷害保険と同様です。
治療費、入院費、休業補償、精神的損害、通院時の交通費、入通院による損害、逸失利益、精神的障害、将来の介護費、葬儀費、薬代、慰謝料など
ここでは、人身傷害補償保険のメリット・デメリットを詳しくみていくことにします。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
補足1:自損事故補償保険に加入している場合は人身傷害補償保険が優先される
補足2:無保険車傷害保険に加入している場合は人身傷害補償保険が優先される
人身傷害保険は、自ら保険金額を設定することができますが、どのくらいの金額に設定すればよいかわからない?という方も少なくないようです。
そこで、ここでは人身傷害補償の金額の目安について、セゾン自動車火災保険、ソニー損保、SBI損保のデータを引用しながら、設定金額について解説したいと思います。
保険金設定金額 | 割合 | 保険金設定金額 | 割合 |
---|---|---|---|
無制限 | 13.5% | 7,000万円 | 1.6% |
2億円 | 0.4% | 6,000万円 | 0.4% |
1億円 | 4.1% | 5,000万円 | 23.0% |
9,000万円 | 0.2% | 4,000万円 | 0.6% |
8,000万円 | 0.7% | 3,000万円 | 55.5% |
『セゾン自動車火災保険公式WEBサイト』より引用
2016年3月末時点
保険金設定金額 | 割合 |
---|---|
無制限 | 2.2% |
1億円~2億円未満 | 0.1% |
3,000万円~1億円以下 | 32.6% |
3,000万円 | 64.1% |
『ソニー損保WEBサイト』より引用
2016年7月末時点
保険金設定金額 | 割合 |
---|---|
無制限 | 10.6% |
2億円 | 0.4% |
1.5億円 | 0.1% |
1億円 | 3.5% |
7,000万円 | 1.0% |
5,000万円 | 34.70% |
3,000万円 | 40.90% |
『SBI損保WEBサイト』より引用
2016年3月~2017年2月時点
今回は3社が公開していたデータのみ参考としているため、上記の表の結果だけを鵜呑みにしてはいけません。
しかし、3社とも設定金額を3,000万円としている方が最も多い結果となりました。
次いで5,000万円を選択している方も一定数存在することから、3,000万円もしくは5,000万円で設定するのがベストといえそうです。
なお、交通事故による総損害額は、被保険者の収入、年齢、扶養家族の人数などによっても異なることを忘れてはいけません。
それだけではなく、生命保険や傷害保険に加入している場合は、そちらからも保険金を受け取る可能性があります。
以上のことから、人身傷害補償保険をいくら位に設定すればよいか迷った際は、設定金額を3,000万円~5,000万円に設定して見積もりを取り、保険料を確認した上で設定するようにしましょう。
人身傷害補償保険は補償内容が充実していることもあり、保険料が高くなってしまいがちです。十分な補償は受けたいものの、できるだけ保険料を抑えるためにはどうしたらよいのでしょうか。
2つのポイントを以下にまとめましたので、参考にしてください。
3,000万円以上の金額を設定している場合は、設定金額を見直しましょう。被保険者の契約状況、生命保険や傷害保険の加入有無によっては、3,000万円でも十分な補償を受けることができます。
保険会社によりますが、人身傷害補償保険に限定特約が付帯されていることがあります。車内・車外両方を補償と、車内のみ補償に分かれていることがあるのです。
車内のみ限定特約を選択すると、補償範囲が狭くなるため保険料を節約することができます。
人身傷害補償保険に加入した場合、加入しなかった場合の違いについて詳しく比較していくことにしましょう。
表を引用しながら解説したいと思います。
人身傷害保険加入 | 人身傷害保険非加入 | |
---|---|---|
過失割合のある 事故に遭遇した場合 |
たとえば、自分の過失が3割、相手の過失が7割で損害額が1,000万円だった場合、自分の過失割合に関係なく全額補償されます。 | たとえば、自分の過失が3割、相手の過失が7割で損害額が1,000万円だった場合、300万円は自己負担となります。 |
単独事故を起こした場合 | 単独事故であっても、治療費、休業損害等の補償を受けることができます。 | 自賠責保険から、一定額のお見舞い金が支払われます。 また、自損事故補償保険に加入しれいれば、そちらから補償を受けることも可能です。 実損ではないため、補償が不十分となることがあります。 |
当て逃げされた場合 | 治療費、休業損害等、実損分の補償を受けることができます。 | 政府補償事業、無保険者傷害保険を利用することになります。 定額制となっているため、実損分が補償されるわけではありません。 また過失があればその分は減額となります。 |
歩行中に事故に遭った場合 | 治療費、休業損害、慰謝料など、過失割合に関係なく実際に受けた損害分の補償を受けることができます。 ただし、「車内のみ」の特約を付けている場合は補償対象外です。 |
加入している自動車保険からの補償はありません。 相手から賠償金が支払われる場合、自分の過失分は減額されます。 |
他の車に乗車中 事故に遭遇した場合 |
治療費、休業損害、慰謝料など、実際に受けた損害分の補償を受けることができます。 ただし、契約車両の搭乗時以外も補償される契約となっている場合に限ります。 |
加入している自動車保険からの補償はありません。 |
結論から言いますと、人身傷害補償保険に加入している場合、どのような事故でも過失割合に関係なく実損分の補償を受けることができます。注意したいのは、歩行中・他の車に搭乗中の事故です。
車内・車外が補償対象となっている場合は補償されますが、車内のみ補償する特約を付けていると補償対象外となります。
一方、人身傷害賠償保険に非加入だった場合ですが、上図の通り実損分が支払われるわけではありません。そのため、補償が不十分となる可能性があります。
生命保険や傷害保険に別途加入している方は、そちらから補償を受けることは可能ですが、人身傷害賠償保険に非加入だった場合のデメリットやリスクを考慮した上で、加入を検討しましょう。
結論からいいますと、生命保険や傷害保険に加入しており、交通事故で死傷・後遺障害を負った際に十分な補償を受けることができる場合は、人身傷害補償保険に加入する必要はないといえます。
更にいうと、普段あまり車に乗らない方は、人身傷害補償で手厚い補償を受ける必要はありません。
そもそも人身傷害補償保険は、交通事故で死傷・後遺障害を負った場合に適用される保険です。一方、生命保険や傷害保険の場合、交通事故以外で死傷・後遺障害を負った場合も補償してもらうことができます。
人身傷害保険を外すことができるのであれば、生命保険や傷害保険の補償内容、設定金額を確認した上で、加入するかどうかを決めるようにしましょう。
自身で判断することが難しい場合は、保険会社に相談すると適切なアドバイスを貰うことができます。
なお、代理店型の自動車保険の人身傷害補償保険は、人身傷害補償保険を外すことができないケースがほとんどです。
そういった場合は、3,000万円から5,000万円程度の低い設定額にすることをお勧めします。
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