無事故で保険を使っていないにもかかわらず、保険料が値上げされることがあります。そもそも、なぜ保険会社は保険料を値上げするのでしょうか。
今回は、自動車保険の値上げについて取り上げながら、保険料値上げの主な理由、2015年以降の動向、今後の予測などについて詳しく解説していきたいと思います。
自動車保険(任意保険)は、事故リスクによって保険料が変動します。そのため無事故で保険を使わなければ、更新時に保険料が下がる仕組みとなっています。
しかし、近年は自動車保険料の値上がりが相次いでおり、無事故でも保険料が上がることがありました。
考えられる理由はいくつかありますが、昨今の傾向からいうと『参考純率』の引き上げが主な原因といえそうです。
『参考純率』とは、保険料を決める際に基準となる保険料率のことを指します。損害保険料率算出機構が算出しており、会員となっている保険会社は、保険料を計算する際に自由意志で利用することができるのです。
損害保険料率算出機構では、2009年と2014年の2度に亘って参考純率の見直しを実施し、2009年に5.7%、2014年に0.7%引き上げています。
それに伴い、損害保険料率算出機構の参考純率を利用していた保険会社も、保険料の値上げを実施したわけです。
参考純率以外にも、保険料が値上げされた理由は3つあります。
多くの保険会社では収支のバランスが崩れており、保険料値上げを余儀なくされました。原因は、若年層の車離れと新規契約者の減少です。
若年の車離れは、貧困などの様々な理由が関係しています。また、2000年から2009年にかけて、自動車の所有台数が16.8%低下している影響から、自動車保険へ加入する方が減少しているのです。
保険料が安いコンパクトカーが人気を集めていることも、保険会社の保険収入減少に拍車をかけたといわれています。一方、保険収入が減少しているにもかかわらず、保険金の支払いは増加しています。
1事故あたりの保険金額の上昇や、高齢ドライバーの事故の増加に原因があるようです。以上のことから、保険会社は保険料を値上げしたのです。
近年、高齢化が進んでおり、60歳以上のドライバーが増加しています。そのため、以下の2つの事象が発生しているのです。
まず①ですが、60歳以上の保険契約者の多くは、長年に亘って自動車保険に加入しているケースがほとんどです。自動車保険は、無事故で保険を使わない年月が長くなるほど、保険料は安くなります。
つまり60歳以上の優良ドライバーが増えると、保険会社の収益が減少してしまうのです。続いて②ですが、まずは以下の図をご覧ください。
※年齢別免許保有者10万人当たり
『一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会』より引用
上記の図は、運転免許保有者10万人当たりの交通死亡事故件数を年齢別で表しています。16歳から24歳が最も多くなっていますが、これは原付バイクが含まれているからです。
注目したいのは、60歳以降となります。極端に件数が増えているわけではありませんが、他の年代と比較すると緩やかに増加しているといえそうです。
以上のことから、『60歳以上の優良ドライバーの増加』、『事故リスクが高い60歳以上の保険契約者の増加』が重なったため、保険会社は保険料を値上げしたのです。
保険会社の収入源は、保険料です。保険料は非課税扱いですので、消費税がアップしても経営に支障をきたすことはありません。
しかし、代理店手数料、店舗の運営費、自動車の修理代、宣伝広告費など、課税対象となる費用がいくつか存在します。
消費税が上がることによって、保険会社の採算が合わなくなるリスクがあるのです。
ようするに、採算悪化を回避する目的で、保険会社は保険料を値上げしたともいえます。
自賠責保険は、2011年に11.7%、2013年に13.5%値上げされています。値上げの理由は、自動車保険(任意保険)と同様、保険料の収入減と保険金支払いの増加にありました。
2005年以降から軽度の後遺障害、傷害関連の保険金請求が増加し、収支が悪化していたのです。実際のところ、2008年から段階的に自賠責保険の保険料は上がっており、2013年が3回目の値上げとなりました。
自賠責保険の場合、自動車保険のように年齢ごとの区分はないため、加入者全員の保険料が一律2割から3割程度アップしたのです。
たとえば自家用普通乗用車の場合、24カ月契約:24,950円だったのが27,840円 。軽自動車の場合、24カ月契約:21,970円だったのが26,370円へと大幅に値上がりしました。
3回に分けて値上げされたとはいえ、被保険者にとって大きな負担となったのは言うまでもありません。
ただし、次項で詳しく解説しますが、2017年4月に保険料が引き下げられることになりました。
自動車保険の保険料の値上げは、2015年以降から落ち着きを取り戻しつつあります。抑えておきたいポイントは、以下の2点です。
自賠責保険の保険料は、2017年4月から平均で6.9%値下げとなりました。対象は全車種となっています。実際の保険料の一例は、以下の通りです。
自家用乗用車(2年契約):27,840円⇒25,830円(7.2%)
軽自動車(2年契約):26,370円⇒25,070円(4.9%)
自賠責保険の場合、自動車保険とは異なり利益追求はしていません。あくまでも、自動車事故による被害者救済を目的としています。つまり、保険料の設定金額は、赤字にも黒字にもならない金額なのです。
2017年4月の値下げは、2008年以来9年ぶりとなりますが、これまでかなり値上げされてきたため、平均で6.9%値下げとなったくらいでは、2008年の水準にはまだまだ届かないといえます。
2016年12月、損害保険料率算出機構は参考純率の引き下げを発表しました。参考純率が適用されるのは2018年1月からとなっており、保険会社ごとで異なるものの1割ほど保険料が安くなります。
『無事故なのに保険料が上がる理由とは?』の項で触れたとおり、2009年と2014年に参考純率がアップしていましたが、参考純率が引き下げられるのは2003年以来のことです。
自賠責保険と自動車保険(任意保険)の保険料が値下げされた一番の理由は、『衝突被害軽減ブレーキ(AEB)』が装着された自動車の普及にあります。参考までに、以下の図をご覧ください。
※AEB装着なしのリスクを1.0とした場合のリスク較差
『損害保険料率算出機構:参考純率改定のご案内』より引用
2012年から2014年に行われた保険実験の結果から、AEB装着ありとAEB装着なしのリスク較差は、約1.1倍あることが分かったのです。
そのため、AEB装着ありの自動車の普及に力を入れるようになり、結果的に交通事故は減少しました。保険会社は保険金を支払う機会が減り、収支バランスは改善されたのです。
ちなみに、2018年1月から適用される参考純率には、AEB装着有無によるリスク評価が加わっています。
今後、車を買い替える予定がある方は、AEBの装着がある自動車に乗り換えることで、保険料の節約につながるかもしれません。
今後の自動車保険について、3つ抑えておきたいポイントがあります。要点を以下にまとめましたので、参考にしてください。
自動車保険は、損保会社が提供している保険商品の中の1つです。損保会社は、世界情勢や国内の景気の影響を受けやすい側面があります。
とはいえ、2017年7月現在、各損保会社は収益環境が安定している状況です。そのため、なんらかの出来事が起こらない限り、極端に保険料が上がるようなことはまずありません。
損保業界は、2015年に過去最高売上高を更新しました。様々な要因はありますが、たとえば、保険料の値上げや等級制度の見直しなどが功を奏したといわれています。
このまま損保会社の収益が上がり、自動車保険事業が安定すれば、さらに保険料が安くなる可能性はありますが、大幅な値下がりは難しいようです。
なぜなら、日本国内において損保業界はすでに成熟期に突入しているため、国内で収益を拡大することが難しいことが関係しています。
2017年7月現在、自賠責保険や自動車保険の保険料が値下がりすることは分かっていますが、どこまで安くなるかは判断が難しいところです。
多くの損保会社が目を向けているのは、新興国の保険市場開拓です。特にアジア諸国や中南米は穴場だといわれています。
新興国の保険市場開拓に成功し、収益の安定化を図ることができれば、おのずと保険料は安くなっていくものです。
保険料の値上げ、値下げを予測する際は、日本国内の情報だけを参考にするのではなく、新興国の事業拡大に力を入れている損保会社の動向や業績、損保業界全体の動きも確認するようにしましょう。
自動車保険の保険料が値上げされた場合、契約内容を見直すようにしましょう。最低限抑えておきたいポイントは、以下の通りです。
古い車の場合、事故で保険を使った際にあまり保険金が支払われないケースがあります。そのため、経過年数に合わせて車両保険の見直しが必要です。
ライフスタイルの変化などで、年齢条件や運転者限定の設定内容が変わっていることがあります。適切な設定内容となっているか、見直すようにしましょう。
保険会社では様々な割引サービスを提供しています。たとえば、早期契約割引、新車割引、安全装置の各種割引、インターネット割引など様々です。
契約時に自動的に適用される割引もありますが、申告が必要となる割引もあります。保険会社へ問い合わせるなどして、利用できる割引サービスは有効活用しましょう。
以上、一通り契約内容を見直した上で、それでも保険料が高いと感じた場合は、一括見積もりを活用して保険会社ごとの保険料を比較してください。
一括見積もりであれば、見積もり条件を1度だけ申告すれば複数の保険会社へ見積もりを依頼することができます。
特に代理店型とダイレクト型の保険料は大きく異なるため、十分に比較検討してください。
私は年間で57,230円の保険料を支払っていましたが、保険スクエアbang!という一括見積もりサイトを利用して、保険料を20,630円まで安くすることに成功しました。
保険スクエアbang!は、見積もり結果がブラウザ上に表示されるので、すぐに保険料を知りたい方にはかなり便利なサービスだと思います。
ちなみに、難しいことは一切していません。5分くらいで出来てしまいました。見積もりサービスと聞くと、資料が大量に送られてくるんじゃないの?電話などの勧誘やセールスがくるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そんなことは一切ありませんでした。